研究概要 |
平滑筋細胞は生体内において収縮に特化した収縮型と増殖・遊走能に富んだ合成型の2種類の形質を示す。平滑筋細胞はこの収縮型と合成型の形質を周囲の環境に応じて可逆的に変換させる。この形質変換制御メカニズムは血管のリモデリングや病態に深く関与しているにもかかわらず、その詳細は明らかにされていない。近年の研究から、平滑筋細胞の特異的マーカー分子の発現がSRFのco-activatorであるmyocardin, MKL1, MKL2等によって制御されていることが明らかにされてきた。これらSRF co-activatorの一つMKL1は細胞内のアクチン骨格系の変動によってその局在が細胞質から核へと変化し、それに伴い転写活性が上昇する。そこでMKL1の細胞内局在変化が平滑筋細胞の形質転換と関与しているという仮説を立てた上で、本年度ではMKL1の局在変化を再構成するようなセミインタクト細胞アッセイ系の構築および局在変化に関与する細胞内因子の探索を行った。 全長MKL1のGFP融合タンパク質を発現させたCHO細胞からセミインタクト細胞を調製し、MKL1の核移行に必要な因子を探索したところ、cytochalasin、細胞質、ATP供給系が必要であることが示唆された。そこで、特にMKL1の核移行プロセス素過程の制御機構に注目して解析を進める目的で、MKL1の核移行を担うと考えられるMKL1のN末部分タンパク質(アミノ酸1〜256番目)のGFP融合タンパク質を大腸菌に発現させ、その精製タンパク質の核内移行をセミインタクト細胞内で再構成しその過程に必要な因子を解析した。その結果MKL1C256の核移行も細胞質およびATP供給系が必要であった。このMKL1C256に結合する細胞質成分をマウス肝臓細胞質から探索したところ、その候補因子としてNucleolin、Radixinを同定することができた。
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