タバコモザイクウイルス(TMV)が感染した植物シロイヌナズナでは、ほとんどのmicroRNA(miRNA)の蓄積が非感染植物と比較して増加することがわかった。このメカニズムを調べるためには、miRNA生合成経路の解明が必要である。そこで、植物のmiRNA生合成経路の解明およびTMV感染におけるmiRNA蓄積異常の解明を本研究の目的とした。昨年度までに、miRNA生合成経路について詳細な解析を行ってきた。 TMVがコードするタンパク質のなかで、126K複製酵素がRNAサイレンシングサプレッサー活性をもつことが報告されていたので、複製酵素がmiRNA経路への影響を及ぼすことが予測された。そこで、複製酵素がmiRNA生合成経路およびmiRNAの機能に及ぼす影響を調べた。複製酵素とmiRNA前駆体を一過的に共発現させる実験を試みた。その結果、複製酵素はmiRNA前駆体の蓄積には影響を与えないが、miRNA/miRNA* duplexを安定化し、miRNAがRISC複合体に取り込まれ機能を果たすのを抑えていることが示唆された。このことから、複製酵素はmiRNA/miRNA* duplexと結合することが予想された。そこで、複製酵素とmiRNA前駆体を同様に一過的に共発現させ、複製酵素に対する免疫沈降実験および免疫沈降物からのRNA抽出を行い、免疫沈降物にmiRNAおよびmiRNA*が含まれているという結果を得た。これにより、複製酵素はmiRNAとmiRNA*両方と結合することが示唆された。さらに、in vitroでの複製酵素とmiRNA/miRNA* duplexとの結合実験を行ったところ、複製酵素はduplexと結合できることがわかった。
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