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2005 年度 実績報告書

十八世紀英国の哲学者ヒュームの宗教論研究を中心とした近現代の宗教哲学の研究。

研究課題

研究課題/領域番号 05J11656
研究機関東京大学

研究代表者

小林 優子  東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)

キーワードヒューム / 宗教哲学 / キリスト教 / 奇跡 / ベイズ主義 / 宗教 / 懐疑主義 / 自然主義
研究概要

今年度の研究では、(1)ヒュームの宗教哲学の全体像を明らかにし、(2)さらにヒュームの「奇蹟論」というテキストについて詳細な検討を行った。詳細は以下のとおりである。
(1)ヒュームの神の存在証明批判の議論は高く評価されており、よく知られている。その一方で、ヒュームのテキストには、神を信じることが人間としてやむを得ないことであるかのように読める箇所が存在する。そのため従来の研究では、ヒューム宗教哲学の各論は高い評価を受けながらも、全体としては謎の多い議論であるとされていた。私は彼の複数の文献を詳細に調べ、ヒュームの宗教哲学には懐疑主義的な側面と、人間の心の本性から宗教の成立を自然主義的に説明するという側面の両面が存在することを明らかにした。その成果を学会(2005年6月、日本イギリス哲学会・関東部会)で口頭発表し、その後、論文を執筆した(『イギリス哲学研究』に所収)。
(2)ヒューム宗教論の中で、現在、哲学的な論争の中心にあるのは「奇蹟論」というテキストである。奇蹟論では、目撃証言に基づいて我々は何を信じることが合理的かという認識論的な問題が、極めて異常な出来事である奇蹟というケースを通して検討されている。私は(1)で明らかにしたヒューム宗教哲学の全体像に照らし合わせながら、奇蹟概念が非宗教的な異常な出来事と超自然的力の介入により生じた出来事という二つの意味に分けられていると解釈した。このような理解をすれば、不明瞭だと批判されているヒューム奇蹟論の主張が明瞭に浮かび上がってくることを示し、論文を執筆した(『論集』に所収)。さらに、ベイズ主義の立場から奇蹟論批判を行い、論争を引き起こしているジョン・イヤマンの論文に対する批判的検討を行い、『哲学研究論集』に執筆した。
なお今年度の補助金は、以上の研究を遂行し、口頭発表一回と論文三本をまとめるための多数の文献の購入と諸経費に用いた。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2006

すべて 雑誌論文 (3件)

  • [雑誌論文] ヒューム哲学における神の信念-デザイン論証批判と、人間本性からの信仰論2006

    • 著者名/発表者名
      小林 優子
    • 雑誌名

      イギリス哲学研究(日本イギリス哲学会) 第29号

      ページ: 69-85

  • [雑誌論文] 証言に基づく信念の合理性と宗教-ヒューム「奇蹟論」に対する一考察-2006

    • 著者名/発表者名
      小林 優子
    • 雑誌名

      論集(東京大学人文社会系研究科哲学研究室) 第24号

      ページ: 341-354

  • [雑誌論文] イヤマンのヒューム「奇蹟論」批判について2006

    • 著者名/発表者名
      小林 優子
    • 雑誌名

      哲学研究論集(東京大学人文社会系研究科哲学研究室) 第3号(印刷中)

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公開日: 2007-04-02   更新日: 2016-04-21  

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