研究概要 |
繊維強化プラスチック(Fiber Rein forced Plastic, FRP)は比強度・比剛性に優れており,軽量化のニーズが高い航空宇宙産業では,その適用範囲が大幅に拡大している.近年FRPの特性を活かすべく,構造物に発生した損傷を非破壊検査により監視することで,その健全性を常に判断し,信頼性を確保する損傷許容設計が重要視されている.こういった構造ヘルスモニタリング技術の実用を考えた場合,定量的に検出した内部損傷がどれだけ実機の運用に支障があるかを常に判断できれば,整備・点検や修理・再設計の指針が得られ,必要最低限の適切な補修の実施が可能となる.このような背景で,検出された損傷の大きさに対して構造健全性が十分であるかを判断する為には,内部損傷を持つ複合材料構造全体の強度を評価する手法の開発が必須である. そこで,構成材料単位の破壊プロセスを考慮したマルチスケールモデリングにより,内部損傷プロセスをイメージでき,なおかつ複合材料の強度を評価できる数値シミュレーションの開発に取り組んだ.これまでに開発した結合力要素手法を応用し,繊維破断過程に対してモンテカルロ法を導入し,繊維破断や界面の剥がれ,樹脂の破壊といった構成材料単位の破壊プロセスに関するシミュレーション手法を提案した.また,微視損傷モデルの妥当性の検証や較正を,単繊維複合材料試験(フラグメンテーション試験およびマイクロボンド試験)を利用することで実現している.まず,炭素繊維・エポキシ樹脂を利用した単繊維複合材料試験を実施し,偏光顕微鏡によるその場観察および走査型電子顕微鏡を利用した繊維引き抜き後の観察を行い,繊維破断部や界面近傍の微視破壊プロセスについて調べた.さらに,構成材の破壊特性を基に解析可能な微視損傷解析を構築し,実験結果をよく再現することを示した.今後はこれらの結果を基にマルチスケールモデリングを行い,構造健全性評価のための強度解析を行なえる手法を確立する.
|