本研究課題では、多様な大気を持つ地球型惑星の表層環境の安定性と、それらの惑星上で発生した生態系の安定性を議論する。研究計画においては、厚い大気による自転軸変動の抑制を主眼としていたが、本年度はまず厚い大気の形成過程とその大気下での表層環境状態を研究することを優先させた。また生態系モデルの基礎研究も行い、生態系の安定性の議論へ向けての準備も行った。 惑星形成過程において、原始大気と呼ばれる水素に富んだ大気を大量に捕獲することにより、厚い大気を保持した地球型惑星が形成される可能性がある。まずはそうした厚い水素大気のもとでの水蒸気による温室効果、および暴走温室状態の研究を行った。その結果、強い温室効果による表面温度の上昇が示唆され、また容易に暴走温室状態に入る可能性があることも示された。さらに二酸化炭素等の温室効果ガスがわずかに大気に加わると、暴走温室状態に入る可能性が急激に大きくなることが示された。逆に、多くの先行研究で仮定されてきた「灰色大気」(放射が波長によらない)を「非灰色大気」に変えて計算を行った結果、暴走温室状態に入りにくくなることも示唆された。 一方、厚い大気のもととなる原始大気の形成を調べるためには惑星系の初期状態を知る必要がる。そこで太陽系の始原物質と考えられている天体の表面組成を調べることを行った。観測データをもとに表面組成の同定を行い、その形成過程に制約を加えることができた。これらの成果は本年度の論文としてすでに受理されている。 生態系モデルの基礎研究においては、生物のサイズとタイムスケールを関係づけることによって、安定した生態系を作り出すことに成功した。この結果は、多様な惑星上での生態系の安定性を議論する上で非常に重要なものである。現在この成果は論文として投稿中である。
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