研究概要 |
研究代表者は、平成17年度に大阪大学核物理研究所(RCNP)で測定したCa-48,Ge-76,Mo-100,Cd-116を標的とした300MeVにおける(p, n)反応データーを解析し、従来(He-3,t)反応で導出されたCd-116とh-116問の遷移強度B(GT)が、(p, n)反応によって導出されたものにくらべ10倍以上小さいことを発見した。また、このことの原因を、(p, n)と(He-3,t)測定のスペクトルを詳細に比較することによって、過去の(He-3, t)測定でもちいられた標的がCd-116に濃縮されていないことにあるとつきとめた。以上のことをドイツにて行われた国際ワークショップCOMEX2にて発表し、その内容がプロシーディングとしてNuclear Physics Aより出版予定である。 上記のことは、本研究課題である二重ベータ崩壊の核行列に対する、従来の理解をくつがえすという点で重要なだけでなく、荷電交換反応のB(GT)にたいするプローブとしての信頼性をゆるがすという意味でも深刻な意味をもつ。このため、研究代表者は、平成18年12月と平成19年3月に、Cd-116標的と未濃縮のCd標的を用い、核子あたり140MeVのHe-3,t)、(p, n)反応の測定を行い、実験的に従来の(He-3,t)データーが未濃縮の標的を用いたものと同じであることを確認した。このことにより、荷電交換反応の信頼性をとりもどし、平成17年度におこなったCd-116標的における測定結果とそこから導かれる核行列にたいする知見の正しさをうらづけることができた。 また、平成18年11〜12月において、本研究の測定計画の後半のうちのSn-116を標的とした300MeVにおける(n, p)反応測定を、RCNPにおいて(n, p)反応施設を用いて行った。 さらに、Ti-48標的をターゲットとした(n, p)測定に必要なTi-48粉末を、入手可能な酸化物の状態から還元する作業を外部委託により実施した。このことにより、従来のデーターでは大きな誤差の要因となっていた酸素起源のバックグラウンドを除去することが可能になった。
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