研究概要 |
中性子過剰な中重核における中性子魔法数の変化に対する知見を得るための研究として、次のことを行った。 本年度は、2005年12月に行った、TOFスペクトロメータを用いた実験の、データ解析の仕上げにあたる部分を主に行った。実験は、液体水素標的を二次標的とし、70Zn破砕片(中性子過剰なTi同位体)のインビームγ線核分光実験である。現在、これまでの研究を投稿論文にまとめているところである。 昨年度までの解析では、Ti同位体の偶偶核(54,56,58Ti)に注目し、58Tiの2+励起エネルギー、陽子非弾性散乱による56,58Tiの2+励起状態生成断面積の導出を行った。 本年度は、上記の結果や核の変形度から、中性子過剰なTi同位体やその周辺核(pf殻核)における核の集団性を議論した。その結果、中性子過剰なpf殻領域の核では、主にCr同位体を中心として集団性が増すことが分かった。同調体で比べれば、Ti同位体はCr同位体よりも陽子欠乏な、言い換えれば中性子過剰な核にも関わらず、Cr同位体よりも集団性は小さいという示唆が得られた。つまり、陽子の欠乏によってのみ変形が進むわけではなく、陽子側の配置も原子核の形に大きな影響を及ぼすことが分かった。これらの情報は、周辺の核における核構造の解明に非常に重要なものである。 本年度はさらに、Ti同位体のうちの奇核(53,55Ti)にも注目した。Ti同位体の奇核は、pf殻の中性子の1粒子軌道に関する情報を得ることが出来るからである。解析によりこれらの核に新しい低励起状態を発見した。また、奇核の低励起状態を比較することで、核内の中性子軌道のエネルギー差に関する情報を得た。この情報により、今まで2+励起エネルギーの変遷から示唆されていた核の閉殻性に関して、新たな知見を得た。
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