本研究では、深部低周波微動(DLFT)の発生メカニズムを解明することを目的とした。2006年東海地域で名古屋大学と共同で行ったDLFTのアレイ観測の結果を解析し、連続的に発生している微動の短いスケールの時間変化を得ることに成功した。その結果、震源の移動は基本的にプレートの走向に平行な方向で、時速約40kmの移動とほぼ同じ位置での発生とを繰り返す様子が得られた。また、初動が不明瞭で微動の開始終了をはっきりとは定義することは困難なDLFT波動継続時間を見積もる方法を開発した。見積もられた波動継続時間の間の各アレイ観測点でのエンベロープ振幅積分をEAI値と呼び、微動の大きさの指標とした。その結果、検測された微動の多くが波動継続時間45秒前後を持ち、かつその波動継続時間においては他の波動継続時間と比較してEAI値が広い範囲にわたることが示された。この特徴的波動継続時間の存在は、DLFTのメカニズム示すうえで重要な性質である。EAI値から地震モーメントヘの変換を行い、DLFTの単位面積あたりのモーメント解放量を推定した。その結果、1日の活動でおよそ7.5x10^5(N m/m^2)という結果が得られた。DLFTと比較することでその特徴的性質を得るため、2004年紀伊半島南東地震の余震観測の際に設置された海底地震計(OBS)に記録された低周波の微動について解析を行った。決定された震源は、トラフ軸に垂直な方向に分布する。震源分布は超低周波地震の震源にほぼ平行で、相補的な位置に広がる。この結果から、この微動が超低周波地震とは別の現象であることが示された。震源が相補的に分布することは、トラフ近傍の物理過程を考えるうえで非常に重要な結果であり、共に安定、不安定すべりの遷移域である沈み込み帯深部との対応から、この現象が「浅部低周波微動」である可能性が示唆される。成果を博士論文にまとめた。
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