1.二次元自由電子的な表面状態のフェルミ面マッピング、ホール効果測定 まずSi(111)表面上に形成される二次元自由電子的な表面状態である√3×√3-Ag、√21×√21-Ag超構造に対して高分解能光電子分光測定を行い、フェルミ面の変化から両者の間でマジョリティキャリアが電子からホール的になることを確認した。これはAg原子からの電子ドープに伴いフェルミ面の円の半径が増大するとともに周期性の変化により電子がブラッグ反射を受けることに起因する。次にこの事実をもとに最大6Tまで磁場をかけることができる超高真空磁気伝導測定システムを立ち上げ、実際にホール効果測定を行いこのキャリアの振る舞いの直接検出を試みた。室温のみの測定であるため表面状態成分の寄与を導出することは困難であったが、ホール濃度の増加が観測され、Two-Layer Modelに基づいた解析により、確かに表面状態のキャリア変化を世界で初めて測定してることが分かった。 2.Bi超薄膜の電子状態測定 近年BiそSi(111)表面上に蒸着すると平坦な超薄膜が形成されることが見つかった。そこで高分解能光電子分光法によりその電子状態を測定した。この電子状態において注目される点は量子サイズ効果によりバルクバンドが量子化され量子井戸状態が形成されること、及びBiの強いスピン・軌道相互作用によりバンドがスピン分裂するのではないかという二点である。測定されたバンド分散を第一原理計算と比較してみたところ、膜厚依存のない表面状態はスピン分裂しているが、量子井戸状態はスピン縮退のままであることが示唆された。さらに両者は混成し同一バンドにおいてスピンの性質が変化するという新しい発見の可能性があることが分かった。
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