研究課題
前年度、現在天文観測において広く使用されている銀河系内ダスト減光のマップに、背景銀河からの遠赤外光の混入によるものと考えられる、系統的な誤差が存在している事を示した。本年度はその誤差についてさらに考察を深めた。まず、SDSSおよびIRASなどの観測データとシミュレーション結果などを組み合わせ、SDSSで観測された銀河からくる背景遠赤外光の量と、ダスト減光マップに含まれていると考えられる誤差の大きさが定量的に一致する事を確認した。そして、誤差に寄与する銀河などに対して得られた知見から、誤差を補正する試みや、日本の遠赤外線観測衛星「あかり」による新しいダスト減光マップ作成の可能性などを考察した。この誤差は、本研究のテーマである宇宙の大規模構造自身と相関を持つ誤差であるため、現在世界各国で進められているような、銀河分布に見られるバリオン音響振動と呼ばれる特徴的な構造からダークエネルギーの状態方程式を決定するような研究に、深刻な影響を与える可能性がある。そのような系統的な誤差を発見できた事は今後の大規模構造研究の発展にとって重要なものである。なお、前述のバリオン音響振動と呼ばれる構造自体の理論的研究も行った。また、本年度はSDSSのデータを用い、宇宙背景放射静止系に対する我々の特異速度によって見かけ上生じる、非常に大きな宇宙の大規模構造のパターンを検出することも試みた。特異速度によって生じる大規模構造に非常に小さく、現在最大、最良の観測であるSDSSのデータをもってしても検出する事は叶わなかったが、現在計画中のより大規模な掃天観測プロジェクトにおいては有為に検出できる事を示し、その物理的意義などを議論した。
すべて 2007
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Publications of the Astronomical Society of Japan 59
ページ: 1049-1060