研究概要 |
本研究では「高速性」に焦点を当てて,マニピュレーションアルゴリズムの開発および機械システムの限界に挑む超高速ロボットシステムの実現を目指している.現在までロボットマニピュレーションの高速化に関しては,アームおよび多指ハンドを統合した汎用性のある器用な高速マニピュレーションに関する研究はない.そこで本年度は,高速多指ハンドアームシステムの開発およびそのアプリケーションとして目標方向へ向かってボールを投げる高速スローイング動作を実現した. 多指ハンドアームシステムは,高速アームと本年度開発した多指ハンドから構成されている.このハンドは高速性を重視した点では本研究室で開発してきた従来のハンドと同様のコンセプトであるが,アームに搭載することを前提に機構を再設計した.そして従来型のハンドと同等の自由度および出力でありながら約30[%]軽量化されたハンドを作製した.そのアプリケーションとして高速スローイング動作を実現した.人間の投球動作を参考に波動の伝播に基づく高速なスウィングに加えて,高速動作で顕著に出現する慣性力を巧みに利用することで投球方向をロバストに制御する方法を提案した.実験では約4[m/s]の速度で動作している手先から目標方向へ向かってボールをリリースするタスクを実現した. また,新型ロボットアームの設計および試作機の開発をおこなった.加減速距離を長くするための無限回転自由度の導入などをキーポイントして,既存のロボットアームよりも高速に運動できることを目標に作製した.次年度から検証実験を開始する. その他に,昨年度から継続してロボットハンドによるダイナミックリグラスピング(対象物体を投げて掴み直す持ち替え動作)の実験をおこなった.今年度は,対象物体の3次元回転運動の計測および対象物体の未知パラメータの学習を取り入れて,よりロバストなリグラスピング動作を実現した.
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