研究概要 |
光機能性分子は化学的手法による光学特性の自由な制御が可能であり、分子レベルの設計が可能なナノ分子デバイス材料として期待される。光機能性分子の機能は特定の励起状態を経由し発現するため、励起状態のエネルギー準位、電荷分布、スピン状態等がその機能を決定づける。それゆえ光機能性分子の機構解明には定量的な励起状態計算法が必須となるが同時に、光機能性分子の計算では数百原子系を対象とするため、大規模系にも対応できる方法でなければならない。 現在、大規模分子の励起状態計算に最も現実的な方法は時間依存密度汎関数法である。この方法において最も計算時間を要する部分の一つはクーロン積分でありその計算量は系のガウス基底関数の総数Nに対してO(N^4)にスケールし増加する。よって原子数を10倍に増やすと計算量は10,000倍にもなってしまうため現在計算可能な原子数は頭打ちとなっており、分子の大きさにそのまま比例するようなスケーリングの低い新たなクーロン積分法の開発が不可欠である。 以上のことから本年度は、ガウス型関数と有限要素の混合補助基底を用いてクーロン場を表現し、クーロン行列を高速に計算する新たな方法Gaussian and finite-element Coulomb (GFC)法を開発した。GFC法では、補助基底の局所性を利用することで計算量をO(N)法にスケーリングを抑えることに成功した。従来のO(N)法に比べ、分子の形状や基底関数の広がりへの効率の依存度が低いことが特徴であり、巨大分子計算への可能性を開いた。また、これら理論の開発に合わせて独自の分子電子状態計算用プログラムパッケージの作成を行った。
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