研究概要 |
1,ケトンへの触媒的不斉アルドール反応における不斉収率の改善 ケトンへの触媒的不斉アルドール反応は、不斉還元法では原理的に合成不可能な、光学活性三級アルコールの新規効率的合成法となる大きな可能性を秘めている。しかしながら、既に当研究室で開発に成功している一価フッ化銅触媒によるアルドール反応では、既存の不斉配位子を用いる限り低不斉収率にとどまることが最大の問題点となっていた。これを改善すべく、懐の深い不斉環境を構築できるビス(フェニルホスホラン)型新規不斉リン配位子を合成し、本アルドール反応に適用したところ、不斉収率を再考66%eeまで向上させることに成功した。ある気質では、既報の触媒系を大きく凌駕する不斉認識能を有していることも明らかとなった(Tetrahedron Lett.2005,46,4325.)。 2,世界初のケトンへの触媒的不斉分子間還元的アルドール反応の開発 還元的アルドール反応は、α,β-不飽和カルボニル化合物へのヒドリド共役付加反応により、系内で金属エノラート生成させ、アクセプターカルボニル化合物へと交差付加させる炭素-炭素結合生成反応である。シリルエノラートなどを前調節する必要が無く、実験手順の簡便性に優れるのが大きな特徴である。しかしながら、ケトンへの触媒的不斉付加は、分子内反応が一例に報告されているのみであった。そこで分子間反応の開発を目指し、共同研究者とともに検討を行ったところ、いくつかの基質において、触媒的不斉分子間還元的アルドール反応が進行することが明らかとなった。特に、市販のアレニックエステルをドナーとして用いたときに、DTBM-SEGPHOSを不斉配位子として用いると、α/γ選択性に改善の余地を残すものの、最高99%eeというきわめて高い不斉収率の発現が観測された(Tetrahedron Lett.2006,47,1403.)。
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