本研究は糖鎖構造変化に着目した新規血中腫瘍マーカータンパク質の発見を目的として、平成17年度より当奨励費の助成を得て開始されたものである。 本年度は、タンパク質同位体ラベル法とMALDI-QIT-TOF質量分析計を用いて行ったスクリーニングにより同定された、数種の肺癌マーカー候補について実際に糖鎖の癌性変化を検証し、臨床使用に対する有用性を確認した。 今回糖鎖構造変化の検証には2種の独立した手法を用い、既存の方法であるレクチンブロッティング法に加え、独自に開発したジオール修飾モノリスチップによる糖鎖の迅速かつ簡便な濃縮精製法に基づいた質量分析法を用いた。ジオール修飾モノリスチップの開発にはGLサイエンス株式会社の協力を得た。また、検証サンプルには年齢、性別などの条件を一致させた16例の進行肺癌患者血清(Stage IIIB or IV)、及び健常者血清を用いた。 このいずれの検証方法においても、上記スクリーニング法の定量性、再現性が確認されたと同時に、血清中の2糖タンパク質について肺癌患者血清での有意なフコース残基の付加亢進が、1糖タンパク質について同残基の顕著な消失が証明された。今回のスクリーニングで、42タンパク質に関して癌特異的な糖鎖変動が示されているため、残りのマーカー候補については今後、同様の検証実験を進めていく予定である。 また、来年度(平成19年度)導入予定の、よりハイスループットスクリーニングが可能な4800Plus MALDI TOF/TOF Analyzer (Applied Biosystems Inc.)の使用に向けて、複数のレグチンカラム、数十から百検体レベルの効率の良いサンプル調製法の条件検討を行っている。
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