研究代表者は、これまでに人工交配により得たトラフグF_1世代を用いてマイクロサテライトDNAマーカーに基づく連鎖地図の作製を行ってきた。本年度は、さらにマーカー数を増やし、連鎖地図の高密度化を行った。その結果、雄16連鎖群上に84マーカーおよび雌26連鎖群上に121マーカーを含む連鎖地図を作製することができた。 一方、多重遺伝子族を形成する速筋ミオシン重鎖遺伝子(MYH)はゲノム上でタンデム・クラスターを形成することが知られている。トラフグではゲノムのドラフト配列が公開されているが、これはscaffoldと呼ばれる単位に断片化したゲノムの塩基配列を解析したものである。遺伝子クラスターは複数のscaffoldにまたがる場合も多く、解析を困難にしている。そこで、作製したトラフグ連鎖地図を利用し、その速筋MYHクラスターの詳細な構造解析を行った。すなわち、トラフグ速筋MYHは、コイCyprinus carpio速筋型MYHの保存性の高い演繹アミノ酸配列をプローブとしたTBLASTNをデータベースに対して行って抽出した。次に、データベースの提供するBACエンドシークエンスなどを利用し、MYHの物理的な位置関係を解析した。さらに、MYHに隣接するマイクロサテライト領域にこれを増幅するプライマーを設計してMYHのゲノム上の位置を同定した。その結果、BACエンドシークエンス解析などでクラスター構造を取ることが示された速筋MYH同士は雌雄両方の地図上で0-1.6cMと近傍に存在することが明らかにされた。これら速筋MYHクラスターは最新版のデータベース(v4.0)においても複数のscaffold上にまたがる場合があり、本研究の成果から他の遺伝子族のゲノム解析においても、連鎖地図が有用であることが示唆される。 現在、QTL解析を行うのに必要な高成長系統および野生魚の人工交配を行っている。
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