既に複雑に作られた神経ネットワークを分析的・解析的に調べる従来の手法ではなく、1神経細胞を基本構成単位としてネットワークパターンを人為的に組み立てて調べるという構成的アプローチによって、ネットワークパターンの意味を知ることを目的に研究を行っている。本年度は、方法論の展開・技術開発を中心に研究を行った。以下に記す。 (1)神経突起の伸長方向を制御した神経回路の構築 アガロースゲル加工技術を用いて、段階的にマイクロ構造を作成することで、神経突起(軸索・樹状突起の伸長方向を制御した1細胞レベル神経回路の構築に成功した。また、多電極基板を用いることで、回路に沿う伝播方向を検出できた。 (2)微小多電極チップと計測システムの開発 より厳密に回路活動を計測するために、1細胞を細胞体、軸索、樹状突起ベースで測れる電極サイズ8μm、電極間ピッチ50μmの空間分解能の高い多電極チップを新たに作製した。試行錯誤の結果、1細胞の活動を多点で高いS/N比を持って検出することができた。また、ハード面に関して、速い活動の計測や波形の信頼性を得るために、サンプリングレートを現在の25kHzから100kHz(64ch同時)まであげ、ソフト面に関しては、刺激・計測の自由度を組み込んだ新たな計測システムを開発した。 (3)神経回路活動における履歴応答の抽出 外部からの刺激に対して神経回路がどれだけ柔軟に適応するのか、またその履歴がどれくらいの期間残るかを調べることは、神経回路のパターンに応じた活動応答特性を評価する上で重要な指標になる。そこで、構築した神経回路への外部刺激として高頻度電気刺激を用いて神経回路の応答変化とその履歴過程を計測した。その結果、構築した回路の刺激応答変化とその履歴応答が24h程度残ることが観察された。 これらの成果を国内、国際会議(計3件)で発表し、ディスカッションを行った。また、(1)に関して論文発表し、(2)、(3)は投稿準備中である。
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