研究概要 |
Candidatus Phytoplasma asteris, onion yellows strainの弱毒株(OY-M)のゲノムには,他の細菌のゲノムでは1コピーしか存在しない遺伝子が複数コピー存在し,その多くは遺伝子クラスターを構成していた.また,OY-Mのtransposaseをコードするかtra5遺伝子の約300bp下流には特異的な組換えが認められ,この遺伝子クラスターがゲノミックアイランドとしてファイトプラズマゲノム内を転移した可能性が示唆された.OY-Mと近縁なOY-Wとtra5周辺のゲノム構造を比較したところ,lipoate protein ligase AをコードするlplA遺伝子の上流においてOY-Wにのみかtra5遺伝子が認められた.lplAはOY-M, OY-Wの両方に1コピーしか存在しない遺伝子であることがサザンプロット解析から確かめられていることから,OY-Wにのみゲノミックアイランドの挿入が起こった可能性が示唆された.最近新たに全ゲノム配列が公開されたCandidatus Phytoplasma asteris, aster yellows witches' broom strain (AYWB)のゲノム構造とOY-Mのゲノム構造を比較したところ,ファイトプラズマのゲノム内に多様性に富んだ領域があることがわかった.また,このゲノム領域には多コピー遺伝子群のクラスターが集中して存在していたことから,多コピー遺伝子群がファイトプラズマゲノムの多様性を生み出す大きな要因であると考えられ,病原性や宿主範囲を変化させる引き金にもなっている可能性がある.
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