生体内において診断と治療の双方を同時に行うことができる生体内導入型診断・治療ナノマシンの開発を目指し、pHに応答して機能を発現するポリマーナノ粒子の創製を目的とした。本研究では、非特異的生体分子の吸着を抑制しつつ特定の生体分子を安定に保持できる、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)と、生体分子固定化ユニットとして活性エステルであるp-ニトロフェニル基を持つモノマーを用いてポリマーナノ粒子を創製した。ポリグルタミン酸(PGA)はpHがアルカリ性から酸性へと変化するとPGAの構造がランダムコイルからα-ヘリックスへと変化することが知られている。この性質を利用しポリマーナノ粒子に酵素とPGAを固定化させ、pH変化に伴うPGAの構造変化が酵素反応に与える影響について検討を行った。PMBNを合成し(Fig.1)、液中溶媒乾燥法によりポリマーナノ粒子を調製した。得られたポリマーナノ粒子の特性をDLS測定、ゼータ電位測定にて解析した。調製したポリマーナノ粒子の細胞障害率を乳酸脱水素酵素(LDH)測定法にて評価した。さらに酵素とPGAを結合させ、PGAの構造変化により酵素活性が変化するかを調べた。活性エステル基を有するポリマーナノ粒子の粒径は200〜260nm、ゼータ電位の値は-3.0〜0.0mVを示した。得られたポリマーナノ粒子のLDH測定を行った結果、市販のポリ乳酸粒子より細胞障害率が低いことが分かった。酵素単独固定の場合pH変化に関わらず活性化率は一定であったが、ポリグルタミン酸との混合系においては、pH6において活性化率が上昇した。また、ポリマーナノ粒子に酵素を結合させ、細胞表面上での酵素反応を基質の蛍光強度の変化から解析を行い、条件検討を行った。
|