以下、研究課題の成果を、論文・研究発表ごとにまとめる。 ○早稲田大学21世紀COEプログラム・演劇研究センター2005年度紀要 研究論文(掲載決定)「1920年代(1920-1926)ベルリンにおける秦豊吉(1892-1926)」 1920年代にベルリンに滞在していた時期の秦豊吉の演劇・舞踊活動について、調査・論考を進めた。 ドイツ表現主義演劇の日本への紹介者としての秦の活動、日本帰国時の舞台評論活動と、当時の日本の演劇シーンへの提起、また、当時の日本で成立しようとしていた、新しい芸術ジャンルとしての「舞踊」への秦の鋭敏な感覚などが明らかとなった。 秦豊吉の20年代の活動は、演劇史的意義と、また30年代の舞踊活動に影響する経験という意味で、舞踊史的意義もある。秦豊吉は、20年代・30年代の日本においての「舞踊」という独立した舞台ジャンルの形成に一役買った、重要人物と考えることが出来るので、さらに今後、同時代のベルリンの資料調査をおこない、20年代のベルリンから秦豊吉が日本へ移入したものが何だったのか、より秦豊吉の捉えた「舞踊」が何であったのかについての考察を深められる余地が残っており、研究を進める予定である。 ○演劇映像学会 研究発表(口頭発表)「秦豊吉のレビユウ構想-文献研究を中心に」、2005年11月24日 1935(昭和10)年に秦豊吉が結成した日劇ダンシング・チームの戦前までの活動を時代的な考察対象とし、秦の著作における言説から、当時の秦の演劇思想・舞踊思想と、さらには、政治・社会考察を含む、ナショナリズムをめぐる秦のアイデンティティーを考察した。この成果をもとに、今後は、一つ一つの舞台や実際の活動の詳細について、文献調査ならびに、当時の関係者への聴き取り調査も重ねて、秦豊吉の活動の舞踊史的意義をさらに問い直していきたい。
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