リポソームを用いた薬剤導入法の効率の低さや細胞毒性などの問題点を解決するため、インビトロタンパク合成系を用いて、ギャップ結合(GJ)の構成タンパク質であるコネキシン43(Cx43)をリポソーム内で発現させることにより作成したCx43発現リポソームの機能解析、および実用化への応用研究を行っている。このリポソームから培養細胞への物質導入効率を検討するため、リポソームを作成時にカルセインを加え、内部にカルセインを含むCx43発現リポソームを作成し、これをCx43発現細胞に添加した。添加2時間後、リポソームから細胞へのカルセインの移行が認められた。同様に、この系を用いてNF-κBシグナルを阻害するオリゴペプチドを培養細胞に投与したところIL-1β刺激に伴うNF-κBプロモーター活性の上昇、およびCyclooxygenase-2のmRNA発現量の上昇を優位に抑制した。これらの物質移行はCx43を発現していないリポソームやギャップ結合の阻害剤を前処理した場合には認められなかったことから、Cx43発現リポソームの投与によりリポソーム-細胞間に機能的なギャップ結合が形成されることが示唆された。さらに、Cxの別のサブタイプであるCx32を同様に発現させたリポソームで蛍光物質導入実験を行ったところ、Cx32発現培養細胞に対しては物質輸送が認められたのに対し、Cx43発現培養細胞に対してはそのような効果が認められなかった。Cxタンパク質には約20種類のサブタイプが存在し、発現パターンには組織特異性がある。したがって、本研究結果は将来的にvitroやvivoにおける組織・細胞選択的な薬剤導入への可能性を高めるものであり、今後さらに実用化に向け研究を継続する。
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