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1995 年度 研究成果報告書概要

野生ダイズの遺伝資源学的および生態遺伝学的調査

研究課題

研究課題/領域番号 06041003
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分学術調査
研究機関北海道大学

研究代表者

島本 義也  北海道大学, 農学部, 教授 (00001438)

研究分担者 梅本 信也  京都大学, 農学部, 助手 (60213500)
山口 裕文  大阪府立大学, 農学部, 講師 (20112542)
曽 富生  台湾中興大学, 農芸系, 教授
大原 雅  北海道大学, 農学部, 助教授 (90194274)
阿部 純  北海道大学, 農学部, 助教授 (00192998)
三上 哲夫  北海道大学, 農学部, 教授 (50133715)
FU-SENG Thseng  Chung Hsign University Graduate Institute of Agronomy, Prof.
研究期間 (年度) 1994 – 1995
キーワード野生ダイズ / Glycine属 / 地理的分布 / 遺伝構造 / アイソザイム遺伝子 / 系統進化 / 細胞質ゲノム / 生態
研究概要

ダイズ(Glycine max)が起源した東アジアには、その近縁野生種が多く分布している。本研究の目的は、ダイズの近縁野生種、特に、ダイズの直接の祖先野生種と考えられているツルマメ(G.soja)について、東アジアにおける分布、生態、系統進化、および、遺伝構造を明らかにすることである。
結果は以下のように要約される。
1)韓国における野生ダイズ(G.sojaとG.gracilis)の分布と生態調査および種子の収集を実施した。野生ダイズは韓国の全土に広く、高密度に分布しており、日本と同様に比較的大きな河川敷や路傍に観察された外、田畑の畦畔にも多く観察された。特に、北東部において田畑の畦畔に栽培されているダイズと同所的に生育している野生ダイズが栽培ダイズに巻き付いているのが特徴的であった。
2)台湾全域とペンフ-島に生育していた野生ダイズの調査を実施した。その結果、Glycine属Glycine亜属の2種とSoja亜属の1種を調査・採集することができた。G.tabacinaについて、ペンフ-島の草本植生地にみつけられた数箇所の集団について調査した。強い海風により草丈は低く、個体密度も低かった。随伴植物も同様の特性をもっていた。G.tomentellaは台湾島の南端の岬の公園の駐車場の脇の草本植生の中に生育していた。蔓性であるが、草丈の高い植物がなく、匍匐状を呈していた。G.formosanaについて、台湾島の北西部の地域の3箇所の集団を観察した。この集団は、従来G.sojaとされてきたが、調査の結果から、東アジアに分布するG.sojaとは特徴的に異なり、古くに記載がなされているG.formosanaの種名で別種とするのが適当であると判断された。
3)韓国におけるツルマメの分布は、全域であり、畦に栽培されているダイズに絡まって生育して状態も観察された。ツルマメの分布の中心地である中国における分布域は、山岳や高原地帯を除いた中国全土で、河川敷、荒廃地等の攪乱されたところに多く観察された。しかし、韓国のように、畑地の中に雑草として入り込んでいるようなことはなかった。
4)ツルマメのアイソザイム対立遺伝子の評価
採集した種子からのアイソザイム遺伝子の分析から、韓国の野生ダイズ集団は遺伝子多様度が高く、特異的な対立遺伝子を幾つか観察され、野生ダイズの遺伝変異の中心地の一つと考えられた。中国の集団については、41個の対立遺伝子が観察され、28が中国全体に分布し、7個が東北部と南部に、2個が中部と南部に、4個が南部にのみ、分布した。多くの座の優占対立遺伝子は日本に分布するツルマメと同じであったが、DiaとPgm1の両座で異なっていた。
ツルマメの細胞質ゲノムの評価
ツルマメの幼植物の葉より抽出した全DNAを対象にRFLP解析を行い、葉緑体(cp)とミトコンドリア(mt)のゲノム型を同定した。3種の型が観察され、cpIIIが優占型であったが、中国の東北部ではcpIII型が、南部においてはcpII型が特異的に優占した。栽培ダイズの優占型であるcpI型は韓国でのみ観察された。mt型は20種類以上が識別され、中国にのみ特異的に観察されたmt型が6種類あったが、その頻度は低く、合計で4%未満であった。優占型はmtIVa型で、次いで、栽培ダイズの優占型であるmtIVb型であった。
cpとmtのゲノム型の両者とも揚子江流域が最も多様性が高かった。cp型とmt型の組み合わせで細胞質のゲノム型を検討した。5種類のmt型がcpII型をもち、他の10種類のmt型がcpIII型をもっていた。優占型のmtIVaはcpIII型をもち、東北部と黄河流域に多く分布し、韓国や北海道においても優占型細胞質ゲノム型であった。栽培ダイズの優占ゲノム型はcpI+mtIVbであるが、ツルマメには韓国と日本で例外的にしか観察されないことから、この細胞質ゲノム型と最も近いcpII+mtIVbがダイズの祖先型と考えられ、この型が多く分布する中国南部、揚子江流域、韓国がダイズの起源地として有力と思われた。

  • 研究成果

    (8件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (8件)

  • [文献書誌] 金子めぐみ・平田聡之・阿部純・島本義也: "ダイズ種子の脂質の脂肪酸組成からみた日本の早生在来種の系統分化" 北海道大学農学部農場研究報告. 29. 31-39 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 平田聡之・金子めぐみ・三澤為一・阿部純・島本義也: "ダイズ在来種における農業形質の地域的分化" 北海道大学農学部農場研究報告. 29. 41-54 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Hirata,T.,M.Kanaeko,J.Abe and Y.Shimamoto: "Genetic differentiation between summer and autumn maturing cultivars of soybean (Glycine max (L.) Merrill) in Kyushu district of Japan." Euphytica. 86(印刷中). (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Hirata,T.,J.Abe and Y.Shimamoto: "RFLPs of chloroplast and mitochondrial genomes in summer and autumn maturing cultivar groups of soybean in Kyushu district of Japan." Soybean Genetic Newsletter. 23(印刷中). (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] Kaneko, M., T.Hirata, J.Abe and Y.Shimamoto: "Phylogenetic differentiation in Japanese soybean landraces with early maturity on the basis of fatty acid composition of oil in seeds." Research Bulletin of the University Farm, Hokkaido University. 29. 31-39 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Hirata, T., M.Kaneko, T.Misawa, J.Abe and Y.Shimamoto: "Regional differentiation in Agricultural characters of soybean landraces." Research Bulletin of the University Farm, Hokkaido University. 29. 31-39 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Hirata, T., M.Kaneko, J.Abe and Y.Shimamoto: "Genetic differentiation between summer and autumn maturing cultivars of soybean (Glycine max(L.)Merrill) in Kyushu district of Japan." Euphytica. 86(in press). (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] Hirata, T., J.Abe and Y.Shimamoto: "RFLPs of chloroplast and mitochondrial genomes in summer and autumn maturing cultivar groups of soybean in Kyushu district of Japan." Soybean Genetic Newsletter. 23(in press). (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

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公開日: 1997-03-04  

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