研究課題/領域番号 |
06041006
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大橋 英寿 東北大学, 文学部, 教授 (40002927)
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研究分担者 |
FUKUMOTO Mar ペルー共和国, カトリカ大学, 教授
森 幸一 サンパウロ人文研究所, 研究官
石井 宏典 茨城大学, 人文学部, 講師 (90272103)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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キーワード | 日系移民 / ボリビア / オキナワ移住地 / 営農戦略 / 対現地人関係 / エスニック・アイデンティティ / 出稼ぎ |
研究概要 |
1.研究の目的 南米諸国には戦後日本から入植した農業移住地が大小30カ所ほど現存する。入植から40年近く経た現在、移住地の多くは現地人雇用による大規模機械化農業で安定期に入っているが、同時にさまざまな問題をかかえてもいる。すなわち、移住地内の日系人社会と現地人社会は、相互依存を深める一方で、雇用関係、行政の分離、日本人学校の独立、土地不法侵入などをめぐってトラブルが発生し、日系人社会は対応に苦慮している。日系人社会内部では、言語・宗教への同化や価値観をめぐって一世・二世・三世間で世代間ギャップが顕在化してきている。また、日本への出稼ぎブームは営農の後継だけでなく移住地の行政にも影響を及ぼしている。 本研究は、ボリビア共和国サンタクルス州の2つの日本人移住地(オキナワ移住地・サンファン移住地)を主要な調査対象移住地にして、下記のような課題に学際的にアプローチして、日本人・日系人社会が、異文化社会、とくに発展途上国社会へ長期にわたって適応し同化していくさいに生じがちな摩擦を理解し、それに対処していくための基礎資料を収集した。 2.調査概要 1.移住地の営農の動向と個別農家の営農戦略について。 (1)個別農家の過去40年間の営農史の事例研究。(2)オキナワ移住地とサンファン移住地の営農形態の比較。 2.日系人と現地ボリビア人の関係について 入植以来40年間の営農形態の推移を、4期(入植期・コロニア形成期・営農基盤整備期・現地社会融和期)にわけてたどり、各時期における移住地全体の営農形態と個別農家の営農戦略を、雇用問題を中心とする対現地人関係に重点をおいて事例研究した。移住地における日系人と現地ボリビア人の関係を、移住地内におけるボリビア人社会の形成過程と現状を把握し、(両者間のフォーマル・インフォーマル関係を特に、雇用をめぐる葛藤、および日本人学校の分離・独立の経緯とその影響について精査した。 3.オキナワ診療所の外来患者の8割を占める現地ボリビア人の居住地域分布と疾病対処行動について組織的な聞き取り調査に着手し、これまでに得た300人のデータをもとに事例研究を行った。 4.移住地における「日本」の影響について 移住地で生育した小・中・高校生のエスニシティと職業的社会化過程を現地人の子弟と比較対照させて組織的なアンケート調査を実施した。児童・青年の職業的社会化過程: (1)日系人子弟の社会化についての参与観察研究。(2)日系人の青年と現地人青年の比較 5.ボリビアからブラジル、アルゼンチンへの転住者の追跡調査:1960〜70年代にオキナワ移住地からブラジルの都市部へ大量に転住した"脱耕者"(「在伯沖縄ボリビア親睦会」を組織)について追跡調査。 6.日本への出稼ぎ者の追跡調査:オキナワ移住地からの出稼の実態調査を、出稼ぎ者が集中する横浜市鶴見区・群馬県大泉町・沖縄県で実施した。 7.ペル-のリマ市をフィールドにして、沖縄本島の一集落出身移民の適応過程を、同郷人ネットワークの形成および同郷性(エスニシテイ)選択行動に焦点を当てて調査研究。とくに、戦前に出稼ぎのためペル-へ渡りそのまま定着した20人の一世たちとその子孫の二世、三世の動向を把握し、日本へ出稼ぎに来ている二世、三世を対象に調査した。 3.総括 南米の移住地の多くは、すでに「営農基盤整備期」「コロニア形成期」を終えて、現在、「現地社会への融合期」へ向かう移行過程にある。融合期とは、移住地の自治組織がより広い郡や県の中に行政上組み込まれていく時期で、道路の維持管理、診療所の運営などが組織的、政治的に現地の政府機関の傘下に入っていく段階である。日本人の自治組織が運営していた道路、学校、診療所などが水準を落とすことなく、いかにスムーズに現地機関に移管できるかが課題となる。 しかし、移住先国の後進性、移住地に居住する現地人の経済・生活レベルの低さ、人口比のアンバランス、生活スタイルの異質性、さらに相互の偏見も重なって、「現地社会への融合」には日系人側の抵抗が予想される。
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