帰国中国人留学生の比較追跡調査による留学生教育の改善と展望に関わる研究

1996 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 06041011
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 遠藤 誉 筑波大学, 物理工学系(留学生センター), 教授 (30092620)
• 研究分担者: 趙 克斌 中国社会科学院, 社会学研究所, 助理研究員 ; 王 震宇 中国社会科学院, 社会学研究所, 副研究員 ; 馬 有才 中国社会科学院, 社会学研究所, 研究員 ; 白土 聡美 九州大学, 留学生センター, 助教授 (60154374) ; 堀 毅 中央学院大学, 法学部, 教授 (70181518) ; 遠藤 公久 筑波大学, 心理学系(留学生センター), 講師 (40221816) ; 米山 道夫 北海道大学, 留学生センター, 教授 (90006312) ; ZHAO Kebin Institute of sociology, Chinese Academy of Social Science, Lecturer ; WANG Zhenyu Institute of Sociology, Chinese Academy of Social Science, Associate Professor
• 研究期間 (年度): 1994 – 1996
• キーワード: 留学効果 / 留学生評価 / 日・欧米比較 / 帰国中国人留学生 / アフタ-ケア / 帰国率 / 留学熱

研究概要

平成6年度の実績報告
1 帰国留学生の洗い出しに専念。日本留学および欧米留学ともにそれぞれ同窓会が出来ており、特に欧米留学に関しては、「欧美同学会」という大きな組織が早くからあり、200頁を越える名簿も作成されていた。ところが、その名簿に記載されている人のほとんどは訪問学者として欧米に行った者か、わずかな国費留学生であって、一般の私費留学生をそこから見つけだすのは困難を極めた。日本留学同窓会に関しては国費が目立ったので調査の偏りを避けるため、独自の名簿を作り上げた。
2 現地面談による予備調査を行って、アンケート作成に備えた。
3 調査に当たっては、中国社会科学院の正式批准(認可)を得た。当初、留日学人活動站と組むことになっていたが、中国側の都合により、社会科学院に切り替わった。
平成7年度実績報告
1 日本側がアンケートの枠組みを設計。中国語に訳して中国側と検討。調整後、日本語に訳し、日本側が中心となって枠組みに沿って詳細に質問事項を設計。それを中国語に訳し、もう一度中国側と検討して、決定。
2 ようやくアンケートの中国語版による印刷物が出来上がったのが、平成7年11月。年末を避け、その前に配布作業を終了。
3 アンケート配布の作業は大きく次の3種類に分けて行った。
1)郵送によるもの300通。回収部数87部、回収率27.0%。
2)全国をいくつかの拠点に分け、各拠点に名人かの調査協力者を置き、調査を依頼。配布数972部、回収部数907部、回収率93.4%。
3)面談により、直接回答してもらう。配布数60部、回収部数60部、回収率100%。
4 調査を通して私費留学生の帰国率の少なさに驚いた。特にアメリカ留学に私費留学生の帰国率は異常に低いのが分かった。そこでアメリカに於いて中国人元留学生の実態調査を行わないと、日本の留学生政策とアメリカの留学生政策の忠実な比較が行えないと判断。アメリカにおけるアンケート調査の設計を開始。現地予備調査。
平成8年度実績報告
1 回収されたアンケートを、どのような形で分析するか、日中双方が一同に集まって検討。任務分担も決めた。入力は中国側。分析は日本側の意見に添って出力。
2 まず、中国語による報告書を中国側が作成し、それを日本語に訳して、分担者自身の視点を加えて報告書を書き直した。その間、何度も電話連絡しあって微調整。
3 分析の結果、以下のことが分かった。
1)「進修生」と呼ばれる留学身分の帰国率が100%に近いことから、調査対象者の中での進修生の占める割合が非常に高いことが分かった(日本では国費扱い)。
2)高学歴の者ほど欧米特にアメリカ志向が高く、アメリカへの崇拝傾向は根強い。
3)日本への印象は悪くなく、月日が経てば経つほど望郷に似た感情を持つ者が多い。
4)指導教官との密着性は欧米に比べ日本が強い。帰国後も連絡。
5)日本への希望として、帰国後に、留学時に修得した学問を発揮できるような教育研究環境作りのための経費援助を望む声が強かった。中国での教育研究費の少なさが原因と思われる。アメリカに対してあまり望まないという特徴も出ていた。
4 留学効果は高く、帰国率の高い日本は貢献度も高い。詳細な分析は報告書に記載。
5 アメリカにおけるアンケート調査の結果、私費留学の目的の大半は移民にあり、学習修了者のほとんどが永住権を取得してアメリカで就職していることが分かった。
6 日本が移民を制限する政策を取っていることは、留学に関しては結果的に相手国に貢献しているのではないかと思われる。今後のさらなる継続的研究が必要。
7 留学生に関する調査を開始したが時間と経費切れ。継続的研究が望まれる。