ハギア・ソフィア大聖堂を中心とする歴史的建築物の劣化現況調査と保存修復計画の立案

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06041013
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 日高 健一郎 筑波大学, 芸術学系, 助教授 (30144215)
• 研究分担者: FERIDUN Cili イスタンブール工科大学, 建築学部, 教授 ; METIN Ahunba イスタンブール工科大学, 建築学部, 教授 ; ZEYNEP Ahunb イスタンブール工科大学, 建築学部, 教授 ; MUFIT Yorulm イスタンブール工科大学, 建築学部, 教授 ; 青木 孝義 宮城工業高等専門学校, 建築科, 講師 (10202467) ; 石川 浩一郎 福井大学, 工学部, 助教授 (50168192) ; 木俣 元一 名古屋大学, 文学部, 助教授 (00195348) ; 河辺 泰宏 愛知淑徳大学, 現代社会学部, 助教授 (70195139) ; 中井 泉 東京理科大学, 理学部, 助教授 (90155648) ; 佐藤 達生 大同工業大学, 工学部, 助教授 (40131148) ; 加藤 史郎 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (40023303) ; 谷川 恭雄 名古屋大学, 工学部, 教授 (70023182) ; 坂本 順 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90023051)
• キーワード: ハギア・ソフィア大聖堂 / 初期キリスト教建築 / 修復 / ドーム / 組積造 / 非破壊探査

研究概要

[前半](8月19日〜9月22日)ハギア・ソフィア大聖堂(イスタンブール)において、1)堂内微気候および亀裂変動の長期自動計測を目的として、温湿度計、変位計、データロガーからなる計測システムを設置した。温度センサー(熱電対)18点、温湿度センサー13点、亀裂変位計24点を堂内各所にそれぞれ適切な方法で固定し、2階ギャラリー・コ-ニスにデータロガーを設置した。測定タイミングは6回/日である。配線工事が困難であり、かなりの時間と労働を要したが、現在正常に作動しており、トルコ側共同研究者から送付された測定データを現在整理中である。この計測によると、ドーム・ベース下方の亀裂は外気温に連動して変化しており、年変化でその幅にどの程度の進展があるか興味がもたれる。大規模な組積造歴史建築物内部の微気候測定については、世界的にもデータが少いので、通年観測により、結露等に関する貴重なデータが入手できると期待される。2)可搬型RCレーダーおよび金属探知器を用いて、中央ドーム基部、第二コ-ニス、ギャラリー床の鉄製補強部材の非破壊探査を行った。探査の目的であった「フォッサーティのリング」については、ドーム・ベース周囲で確認されたものの、ドーム基部では発見できなかった。次年度調査で再度試みる予定である。
[後半](9月23日〜10月29日)建築史、美術史のメンバーにより、シリア、トルコ南部、イタリア北部の初期キリスト教建築を対象として、壁体の劣化と崩落、残存する柱頭の様式、モザイクの材料と様式的特徴に関するジェネラルサーベイを行った。特にハギア・ソフィアの華麗な篭形柱頭の先例ないし前段階と考えられるいくつかの作例がシリアと北イタリアで認定され、詳細な記録をとった。このジェネラルサーベイの結果は、現在各メンバーが個別に整理を進めている。

研究成果

• [文献書誌] 河辺泰宏、青木孝義、日高健一郎、佐藤達生: "ドーム殻に設置された円筒管と中央ドームの形態的特徴について-ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その3)-" 日本建築学会大会学術講演梗概集. 433-434 (1995)
• [文献書誌] 佐藤達生、日高健一郎、河辺泰宏、山下王世、飯田喜四郎: "ハギア・ソフィア大聖堂メイン・ドームの施工線の形状-ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その4)-" 日本建築学会大会学術講演梗概集. 435-436 (1995)
• [文献書誌] 佐藤達生、日高健一郎、河辺泰宏、青木孝義、山下王世: "ハギア・ソフィア大聖堂メイン・ドームの施工線の形状" 日本建築学会論文報告集. (掲載決定済). 未定 (1996)
• [文献書誌] 谷川恭雄、日高健一郎、李聡子: "ハギア・ソフィア大聖堂の構造的補強材に関する非破壊検査-ハギア・ソフィア大聖堂調査報告(その5)-" 日本建築学会東海支部研究報告集. 25-28 (1996)