研究課題
平成6年度に行った第一次調査において、テル・コサック・シャマリ遺跡の南側斜面にA、B、C、Dの4つのトレンチを設定した。トレンチによる試掘調査の結果、上層からウバイド・ウルク期の遺講が多数検出され、その下方に位置する水成層を除去すると、下層で土器新石器文化の堆積層が確認された。本年度は、上部のウバイド・ウルク期の遺構と、下部にある土器新石器の文化層の調査を主な目的とした。具体的には、上述のトレンチを軸にして平面的に発掘区域を拡げていった。Aトレンチ上部では、ウバイド期の住居址が長い間使用されていたことがわかった。礎石の上に日干しレンガを積み上げて形成された建物は、いくつかの小部屋に仕切られており、生業技術の貴重な証拠を良好に残している区画も見られた。Aトレンチ下部では、C・Dトレンチをつなげることにより、土器新石器時代の空間利用の復元に努めた。上層のウバイド文化層が予想以上に低いレヴェルにまで堆積している状況がつかめた。また、Bトレンチでは、ウバイド後続期あるいはウルク期の生活区域を精査し、その実体を復元することに努めた。前年度に確認されていた土器焼成窯を中心として、土器づくりに関する施設が一定の時期に営まれていたことが推測された。各トレンチにおいても、各時期の生活を面的に捉えられ、満足のいく成果をあげることができた。現段階では、本遺跡が長期間に渡って、様々な形態で利用されていたことが明らかになってきた。今後は、土器新石器に始まる本遺跡の生活利用をさらに解明すべく、より細かい精査を継続し、各トレンチで得られたデータを体系的にまとめあげていく予定である。
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