熱帯浅海域における海草生態系と海藻生態系における物質循環の比較研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06041028
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 小池 勲夫 東京大学, 海洋研究所, 教授 (30107453)
• 研究分担者: 山室 真澄 工業技術院, 地質調査所海洋地質部, 研究員 ; 小松 輝久 東京大学, 海洋研究所, 助手員 (60215390) ; 鈴木 孝男 東北大学, 理学部, 助手 (10124588) ; POLLARD P. Department of Chemical Engineering and m, 研究員 ; 南川 雅男 北海道大学, 大学院・地球環境科学科, 助教授 (10250507) ; 國井 秀伸 島根大学, 汽水域研究センター, 助教授 (70161651) ; 相生 啓子 東京大学, 海洋研究所, 助手 (90107459) ; 木暮 一啓 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10161895) ; 飯泉 仁 北海道区水産研究所, 室長授 (00159550) ; 野島 哲 熊本大学, 理学部・附属臨海実験所, 助教授 (30112288) ; 向井 宏 北海道大学, 理学部・附属臨海実験所, 教授 (00013590) ; 西平 守孝 東北大学, 理学部, 教授 (80004357)
• キーワード: 海草 / 熱帯藻場 / 海藻生態系 / 熱帯ラグーン / 窒素固定 / 草食性魚類

研究概要

本年度も、11月から12月にかけて、フィージ-のGreat Astrolabe環礁内のDravuni島付近で、海草藻場と海藻藻場の比較調査を昨年に継続して行った。この研究の目的は、熱帯浅海での物質循環や生物群集の活動の中で大きな役割を占める礁湖内での、生元素の循環と生物群集の動態を、海草生態系と海藻生態系で比較し、それぞれの生態系の成立機構と機能を明らかにすることである。海草藻場として従来から解析を継続しているこの海域での卓越種であるボウバアマモのほぼ純群落を選び、また海草群落としては昨年度に設定したボウバアマの群落に隣接する石灰藻を中心とする群落を選んだ。昨年度に既に物理場を含む環境調査や基礎的な生物種組成や生物量調査等がなされているので、今年度は、環境場の調査は堆積物間隙水を含む栄養塩調査のみとした。栄養塩関係では、熱帯ラグーンの生態系において、窒素のように生物機能(窒素固定)によって系内への供給がなく、系の生物量を支配している可能性のあるリンについて、堆積物中の現存量の評価を行った。生態系としての機能の解析についての項目は、1)ボウバアマモの成長速度の見積り、2 海草の根茎の成長速度の解析、3)各種藍藻による窒素固定がこれら藻類での窒素代謝に占める割合の評価、4)草食性魚類の補食による海草藻場の制御の可能性、5)生態系を構成する各生物群集および有機デトリタス中の窒素・炭素の安定同位体比を測定することによって、これまでの生物群集に関する情報と併せて生態系中の食物連鎖について定量的に明らかにする。実験は12月に終わったばかりであり現在分析を進めている所なので結果については予察的なものである。しかし海藻生態系に比べて、海草生態系での物質循環および生物構造の多様性について新しい知見を得ることが出来ると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Koike, I. and K. Terauchi: "File scale distribution of nitrous oxide in marine sediments" Marine Chemistry. (in press).
• [文献書誌] Koike, I., and T. Suzuki: "Nutritional diversity of symbiotic ascidians in a Fijian seagrass meadow" Ecological Rsesearch. (accepted).
• [文献書誌] Aioi, K. AND T. Komatsu, K. Morita: "Giant seagrass, Zostera caulescens Miki, discovered uin Funakoshi Bay, Iwate Pref." Bull. Jap. Soc. Fish. Ocean.60(in press).
• [文献書誌] Mukai, H. Iijima: "Grazing effects of a Gammaridean Amphipoda, Ampithoe on the seagrass,Syringodium isoetifolium, and epiphytes in a tropical seagrass bed in Fiji" Ecological Research. 10. 1-16 (1995)
• [文献書誌] Aioi, K. and T. Komatsu: "A preliminary report on the recovery process of Zostera marina in Otsuchi Bay, northern Japan" Proc. International Seagrass Biology Workshop, Rottnest Island, Western Australia. 1-4 (1996)
• [文献書誌] Nishimura, M., K. Kogure, K. Tsukamoto, and K. Ohwada: "Detection and direct count of specific bacteria in natural seawater using 16SrRNA oligonucleotide probe" Bull. Jap. Soc. Microb. Ecol.10. 73-79 (1995)