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1996 年度 研究成果報告書概要

イスラム圏における人間移動と共生システムに関する調査研究

研究課題

研究課題/領域番号 06041034
研究種目

国際学術研究

配分区分補助金
応募区分学術調査
研究機関東京外国語大学

研究代表者

家島 彦一  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90014472)

研究分担者 PETROV Petar  ブルガリア科学アカデミー, 高等研究員
GUVENC Bozku  トルコ共和国大統領府, 主席補佐官(文化担当
鈴木 均  アジア経済研究所, 研究員
寺島 憲治  千葉大学, 文学部, 非常勤講師
佐原 徹哉  東京都立大学, 人文学部, 助手 (70254125)
飯塚 正人  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助手 (90242073)
新免 康  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (10235781)
黒木 英充  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (20195580)
西尾 哲夫  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (90221473)
林 徹  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (20173015)
羽田 亨一  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (90092460)
永田 雄三  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20014508)
中野 暁雄  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (70014470)
上岡 弘二  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (80014512)
研究期間 (年度) 1994 – 1996
キーワードイスラム圏 / 人間移動 / 共生システム / 聖者廟 / 定期市 / 黒海 / 地中海 / インド洋 / Central Asia
研究概要

本プロジェクトは、広域的観点から、西は東欧・トルコから東は中国沿岸部までを調査対象とし、様々な特徴をもつ諸集団が移動・共存するイスラム圏の多元的社会において、共生システムがどのように機能しているかを、とくに聖者廟に焦点を当てて調査研究した。平成6年度はブルガリア・トルコの東地中海・黒海地域を重点地域とし、共生システムの実態について調査した。平成7年度は、ペルシア湾岸地域(イラン・パキスタン)を重点地域とし、主にヒズル廟に関する現地調査を実施した。平成8年度は、さらに東方に対象地域を広げ、中国沿岸部と中央アジア(新疆・ウズベキスタン)を中心に聖者廟などの調査を実施し、あわせてトルコとイランでヒズル信仰に関する補充調査を行なった。
共生システムの様相の解明を目指す本研究で中心的に調査したのは、伝統的共生システムとして位置づけられる聖者廟信仰・巡礼の実態である。とくにヒズル廟に着目し、地域社会の共生システムとしていかに機能しているか、どのように変化しつつあるかについて情報を収集した。その結果、ヒズル信仰がきわめて広域的な現象であり、多様な諸集団の共存に重要な役割を果たしていることが明らかになった。まず、トルコでの調査では、ヒズル信仰が広範に見られること、それが様々な土着的ヴァリエイションをもっていることが判明した。ペルシア湾岸地域では、ヒズル廟の分布と海民たちのヒズル廟をめぐる儀礼の実態調査を行った結果、ペルシア湾岸やインダス河流域の各地にヒズル廟が広範に分布し、信仰対象として重要な役割を担っていることが明らかになった。ヒズル廟の分布および廟の建築上の構造・内部状況を相互比較し、ヒズル廟相互のネットワークについてもデータを収集した。興味深いのは、元来海民の信仰であったヒズル廟が現在ではむしろ安産・子育てなどの信仰となり、広域地域間の人の移動を支える機能を示している点である。さらに中国では、広州・泉州などでの海上信仰の検討を通じて、イスラムのヒズル信仰が南宋時代に中国に伝わり、媽祖信仰に影響を与えたという推論を得た。また、中央アジアの中国・新疆にも広範にイスラム聖者廟が分布しているが、墓守や巡礼者に対する聞き取り調査を行った結果、ヒズル廟などと同様、聖者廟巡礼が多民族居住地域における広域的な社会統合の上で占める重要性が明らかになった。
聖者廟の調査と並行して、多角的な視点から共生システムの様相を調査研究した。一つは、定期市の調査である。イラン北部のウルミエ湖周辺における調査では、いくつかの定期市サークルが形作られていることが判明した。また、パキスタンではイスラマバ-ド周辺の定期市、新疆ではカシュガルの都市および農村のバザ-ルで聞き取り調査を実施し、地域的なネットワークの実態を把握した。他方、ブルガリアでは、聞き取り調査により伝統的な共生システムがいかに機能しているかについて情報収集を行い、宗教的ネットワークを中心として伝統的システムとともに、現在の共生システムがどのような状況にあるかについて興味深い知見を得た。キプロス・レバノン・シリアでは現在、宗教・民族対立をヨーロッパによる植民地支配の遺産ととらえ、かっての共生システムの回復を試みている様子を調査した。いま一つは、言語学的観点から共生システムをとらえるための調査で、多様な民族・宗教集団が共存するイスラエル・オマーン・ウズベキスタンで実施した。イスラエルでは、ユダヤ・イスラム・キリスト3教徒の共存に関する言語学的・民俗学的データを収集した。また、ウズベキスタンでは多言語使用状況の調査を行い、共和国独立後、ウズベク語公用語化・ラテン文字表記への転換といった政策にもかかわらず、上からの「脱ロシア化」が定着とはほど遠い実態が明らかになった。
以上のように、イスラム圏の異民族多重社会においては、多様な諸集団の共存を存立させる様々なレベルにおける共生システムが広域的な規模で機能している。とくに、代表的なものとして、聖者廟信仰・巡礼の実態が体系的かつ具体的に明らかになった。

  • 研究成果

    (24件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (24件)

  • [文献書誌] 家島彦一: "中東の歴史的広がりとイスラーム世界意識の形成" 中東研究. 418. 2-12 (1996)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 家島彦一: ""Some Problems on the Formation of the Swahili World and the Indian Ocean Maritime World"" Essays in Northeast African Studies,Senri Ethnographical Studies. 43. 319-54 (1996)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 家島彦一: "黒海・東地中海とペルシャ湾におけるヒズル信仰に関する調査" イスラム圏における異文化接触のメカニズム. 4(出版予定). (1997)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 上岡弘二: "The Networks of Weekly Markets and Bazarmajs in Gilan" アジア・アフリカ言語文化研究. 48・49. 295-316 (1995)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 林徹: "方言分布における外来者地域 -トルコ語Bolu方言の場合-" アジア・アフリカ言語文化研究. 48・49. 659-679 (1995)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 黒木英充: "ギリシア正教=カトリック衝突事件 -アレッポ・1818年-" アジア・アフリカ言語文化研究. 48・49. 137-154 (1995)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 家島彦一: "大旅行記 1(イブン・バットゥータ訳注)" 平凡社, 418 (1996)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 家島彦一: "大旅行記 2(イブン・バットゥータ訳注)" 平凡社, 540 (1997)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 家島彦一: "海域からの歴史-地中海からインド洋まで" 名古屋大学出版会(出版予定), (1997)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 中野暁雄: "Ethnographical Texts in Moroccan Berber (2) - Studia Be beri (II)" アジア・アフリカ言語文化研究所, 99 (1995)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 佐原徹哉: "An Eastern Orthodox Community During the Tanzimat - Documents from a Register of the Bulgarian Society in Ruse (1860-1872)" アジア・アフリカ言語文化研究所, 513 (1997)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] 寺島憲治: "The Diary of a Bulgarian Peasant Iliya Vankov for the Year 1900 - (1)Text and Notes" アジア・アフリカ言語文化研究所, 287 (1997)

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      「研究成果報告書概要(和文)」より
  • [文献書誌] YAJIMA,Hikoichi: "Historical perspective of the Middle East and the Fromation of awareness of the Islamicworld (in Japanese)" Middle Eastern Studies. 418. 2-12 (1996)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] YAJIMA,Hikoichi: "Some problems on the formation of the Swahili World and the Indian Ocean Maritime World" Essays in Northeast African Studies, Senri Ethnosraphical studies. 43. 319-354 (1996)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] YAJIMA,Hikoichi: "A study of the Hizr cult in the Black Sea, Eastern Mediterranean and Persian Gulf coast regions (in Japanese)" Mechanizm of Multi-cultural Encounter in Muslim World. 4(forthcoming). (1997)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] KAMIOKA,Koji: "The networks of weekly markets and Bazarmajsin Gilan" Journal of Asian and African Studies. 48・49. 295-316 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] HAYASI,Tooru: "The relevance of immigrant areas in dialect distribution (in Japanese)" Journal of Asian and African Studies. 48・49. 659-679 (1995)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] KUROKI,Hidemitsu: "The Orthodox-Catholic elash in Aleppo in 1818 (in Japanese)" 48・49. 137-154 (1995)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] YAJIMA,Hikoichi: Heibonsha. A Great Book of Travel vol.1 (in Japanese), 418 (1996)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] YAJIMA,Hikoichi: Heibonsha. A Great Book of Travel vol.2 (in Japanese), 540 (1997)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] YAJIMA,Hikoichi: Nasoya Univ.Press (forthcoming). History form Sea Area : From Mediterranean Sea to Indian Ocean (in Japanese), (1997)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] NAKANO,Akio: ILCAA. Ethnographical Texts in Moroccan Berber vol.2, 99 (1995)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] SAHARA,Tetsuya: ILCAA. An Eastern Orthodox Community During the Tanzimat., 513 (1997)

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      「研究成果報告書概要(欧文)」より
  • [文献書誌] TERAJIMA,Kenji: ILCAA. The Diary of a Bulgarian Peasant Iliya Vankov for the Year 1990 : Text and Notes, 287 (1997)

    • 説明
      「研究成果報告書概要(欧文)」より

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公開日: 1999-03-09  

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