東アジアにおける情報伝達と人間移動-南北の比較研究-

1996 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 06041036
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 東京外国語大学
• 研究代表者: 中嶋 幹起 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10014507)
• 研究分担者: 瀬戸口 律子 大東文化大学, 外国語学部, 教授 (90054858) ; 花登 正宏 東北大学, 文学部, 教授 (60107175) ; 王 鐘翰 中国 中央民族大学, 教授 ; 比嘉 実 法政大学, 沖縄文化研究所, 所長 (50061221) ; CHOB KachaーA タイ国 山地民族研究所, 副所長 ; BIRA Shangda モンゴル科学アカデミー, 会員 ; 津曲 敏郎 小樽商科大学, 言語センター, 助教授 (80113588) ; 尹 紹亭 中国 雲南省民族博物館, 副館長 ; 上里 賢一 琉球大学, 法文学部, 教授 (50101457) ; 新谷 忠彦 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90114800) ; 西澤 治彦 武蔵大学, 人文学部, 助教授 (80218148) ; 藤本 幸夫 富山大学, 人文学部, 教授 (70093458) ; 鵜殿 倫次 愛知県立大学, 外国語学部, 助教授 (90137076) ; 加藤 直人 日本大学, 文理学部, 助教授 (90130468) ; CHRISTIAN Danicls 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30234553) ; 竹内 房司 学習院大学, 文学部, 助教授 (30179618) ; 峰岸 真琴 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (20190712) ; 中見 立夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (20134752) ; 斯波 義信 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (00039950) ; 梅田 博之 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (20014459) ; 大江 孝男 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (50014460) ; 栗原 浩英 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (30195557) ; WANG Zhong-han Central Minority University ; YIN Shao-ting Yunnan museum(China)
• 研究期間 (年度): 1994 – 1996
• キーワード: 情報伝達 / 文化変容 / 漢語 / 中国少数民族 / 当案館資料 / 韓国語 / 人口移動 / 民族関係 / East Asia / China / Minority

研究概要

研究代表者及び各研究分担者は、当該年度が最終年度にあたるため、全員各々の研究を成果としてまとめる方向で中国の南北を軸として東アジアを東北部、西北部、東南部に分けて広域的な調査活動を行い、調査漏れや疑問点をできるだけ少なくするよう努力した。この最終年度では、とくに、非漢民族を中心とした民族地域である中国東南部と西北部に対して新たに3人の分担者の協力をえた。このことによって、当該地域での開放体制への移行と経済発展による急激な変化が、その言語を含めた情報伝達、人間移動、社会や文化にどのような影響をあたえているかを歴史的視座をもって改名使用と試みた。
東北部の梅田は、韓国のソウルを中心として世代間の差異に注目して、言語的記述をおこなった。中嶋は、中国諸民族と漢族との言語文化接触について研究を行ってきたが、今年度は北京においてシボ族、蒙古族、エベンキ族の言語生活と社会生活の実態の把握に努力した。記述的研究としては、エベンキ語の動詞の格組織、北京語の成立と深い関係を持つ北京周辺の河北方言の音韻と語彙の調査などをおこなった。また、北京図書館や当案館において乾隆年間の満州文献や17世紀から19世紀に至るジェスイット教会士の活動と関連文献の調査をおこなった。西夏語文献の収集は、後述の大塚との共同研究であって、このため北京と寧夏の研究者との学術交流を推進するための各種連絡活動もおこなった。中見は、モンゴル族の社会文化変容と移動について、文書史料とフィールド・ワークの成果の統合をめざした。内モンゴル当案館で所蔵文書の調査をし、北京の第一歴史当案館において、モンゴル・州関係文書の収集をした。さらに、中見は、モンゴル文書館所蔵清朝・ボグド・ハーン政権期史料についてほぼその全容をあきらかにした。加藤は満州族の社会文化変容を歴史学の立場から研究した。継続調査をおこなっているエベンキ、オロチョン、ダウ-ルの3つの民族の自治旗が存在する中国内蒙古自治区のフルンブイル盟を訪れ、これらの民族の現状、歴史認識をを調査した。今回の調査からは、今まで不明であった3つの民族を一括する「ソロン」が実体のあるものであり、区分することが困難であることが確証をえた。東南部担当の斯波は、香港、マレーシア、シンガポールの南洋華僑を調査して、人口移動と社会変化の調査をおこなった。斯波はとくに南洋でゴム園の事業で成功した華僑との連携をもっており、アジア・西太平洋の世界で経済ブロックとしてドミナントな勢力と目される華僑を世界史的な流れの中でとらえようと試みている。「変わらないように」見える華僑のネットワークが歴史的推移の中ではぐくまれ変容してきていることが本研究の一つの成果である『華僑』(岩波新書 1995年刊行)のなかで詳細に明確にのべられている。峰岸は中国の貴州省において、主として、スイ族の言語調査を実施した。峰岸は数年来東南アジアのタイ族やラオ族の言語の調査に従事してきたので、同じくタイ系の民族であるスイ族の言語調査は比較言語学的な立場から重要性をもっている。スイ族への漢民族文化の浸透の実状把握も試みた。分担者以外でこの調査に新たに加わった西澤(武蔵大学)は、上海経由紹興を訪れて、酒造の実態を調査した。このことによって、その生業形態と流通機構及び経済交流の実態を把握した。これは本研究課題の情報伝達と人間移動に深くかかわるテーマである。また大塚秀明(筑波大学)は、中国西北部の甘粛と寧夏に赴き、西北地区の漢語方言を中心とした言語調査をおこない、西夏語研究文献の収集をおこなった。これはAA研において目下研究の途上にある西夏文献の電算機処理に利用するための必要な文献収集であって、このことにより、西北地区のかつておこった民族の移動と言語の伝播そしてその消滅の歴史を再構成しようとする試みである。栗原は、中国とベトナム国境地帯に赴き、経済開放にともなう急激な社会変化と人口移動の様子を観察した。これは、また、ベトナムの第8回党大会の方針により、せいじてきな引き締めが行われ、対中国関係の見直し、対外開放の制約が実施される可能性を現地において検証しようとするものであった。

研究成果

• [文献書誌] 中嶋幹起: "中国北方方言の多様性-北京語の調査から-" 京都産業大学国際言語科学研究所 所報. 17-2. 24-53 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 中嶋幹起: "中国の諸言語-西北方言を中心として" 大東文化大学言語文化研究所 紀要. 4. 20-28 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] ダニエルス,クリスチャン: "シプソンパンナー王国の製紙技術-西双版納泰の実地調査による再現" 就実女子大学史学論集. 9. 47-104 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 峰岸真琴: "カシ語の音声と音韻について" アジア・アフリカ言語文化研究. 46,47合併号. 160-174 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 中見立夫: "文書史料にみえるトクトホの実像" アジア・アフリカ言語文化研究. 46,47合併号. 371-386 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 梅田博之: "Age Differentiation of the Vowel System in the Seoul Korean --Acoustic Measurements" アジア・アフリカ言語文化研究. 48,49合併号. 443-453 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] ダニエルス,クリチャン: "カステラ文化誌全書(共著) 十五、十六世紀のアジアにおける砂糖製法と日本での消費拡大" 平凡社, 250 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] ダニエルス,クリスチャン: "現代中国の諸問題(共著) 近世日本の立木式油絞り機の起源-アジア域内諸国における在来産業技術系譜の一事例として" 山川出版社, 400 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] ダニエルス,クリスチャン: "カステラ文化誌全書(共著) 十五、十六世紀のアジアにおける砂糖製法と日本での消費拡大" 平凡社, 250 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] ダニエルス,クリスチャン: "現代中国の諸問題(共著) 近世日本の立木式油絞り機の起源-アジア域内諸国における在来産業技術系譜の一事例として" 山川出版社, 400 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Nakajima Motoki: "Investigations of Pcking Dialect" Journal of Kyouto Sangyoo University. 17-2. 24-53 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Nakajima Motoki: "Northwestern dialect in China" Journal of Daitobunka University. 4. 20-28 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Daniels christian: "Production of paper in Sipsongpanna" Journal of Shuujitsu women's Colledge. 9. 47-104 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Minegishi Makoto: "Kasi Phonology" Journal of Aisan and African Studies. 46,47. 160-174 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Nakami Tatsuo: "Portrait of Tokutoho" Journal of Aisan and African Studies. 46,47. 371-386 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Umeda Hiroyuki: "Age Differentiation of the Vowel System in the Seoul Korean Acoustic Measurements" Journal of Asian and African Studies. 48,49. 443-453 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Daniels Christian: Heibonsha. Castcrra Culture, 250 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Daniels Christian: Yamakawa Shuppan. Problems of Modern China, 400 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より