研究分担者 |
サンゴーレ I マリ国立人文科学研究所, 研究員
保坂 実千代 日本学術振興会, 特別研究員
三浦 励一 京都大学, 農学部, 助手 (60229648)
月原 敏博 大阪市立大学, 文学部, 助手 (10254377)
田中 樹 京都大学大学院, 農学研究所, 助手 (10231408)
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研究概要 |
1.<播種前耕起なし-専用長柄鍬をもちいた複数者による播種-立耨方式での押し出し除草鋤での徐草>を主な技術要素とする在来農耕技術(タイプAとする)がセネガルからチャドに至るサヘル地域に広汎に存在することを確認した。この方式はより南方に分布する。<播種前の短柄鍬による耕起-短柄鍬を用いた一人での播種-短柄鍬による深い前傾姿勢での除草>という組み合わせ(タイプBとする)を好対照をなす。後者の農耕方式は,さらに南の森林地帯から溢出したものと見られる。AとBとは系列を異にするサヘル固有の農耕方式として定立しうると考えられた。 2.土壌および土壌管理技術の調査の結果,セグ-近郊では,外来技術を基軸とする畜力反転犁耕の導入が土壌荒廃(作土の砂質化や浸食)を加速させている実態とその機構が明らかになった。これとは対照的に,ドゴン高原周辺では、雨水獲得を肥沃度維持を目的とした比較的集約的な土地利用・土壌管理法が観察された。 3.マルカラ・ダムの建設がニジェール川沿いの農村に与えた負の影響を調べ,広範な地域で不可逆的な在来低湿農地の喪失または水分条件悪化が生じていたことを解明した。また、統計・観察データから有畜農法要素の拡散状況を地図化し,フランス系の導入技術と気候条件および在来農法との不調和について地理学的に考察した。 4.マリの広い範囲で主食とされているトウジンビエの畑には脱粒性をもつ雑草型がかなりの頻度で含まれ,収穫能率を低下させている。しかし,サヘル地域の農民は脱粒型もまた食用になり,より早生で,乾燥年にも耐えることから,一定の価値を認め,あえて除草しない場合があることが明らかになった。 5.農村への外来技術の導入に際して見られる農民の意志決定様式について社会学的な調査をおこない,新たな技術移転の際に起こりうる諸問題を予測検討した。
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