インドネシアの天然薬物調査研究(第5次)

1995 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 06041071
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 学術調査
• 研究機関: 福山大学 (1995); 大阪大学 (1994)
• 研究代表者: 渋谷 博孝 福山大学, 薬学部, 教授 (50116042)
• 研究分担者: SIMANJUNTAK パルトムアン インドネシア国立生物工学研究所, 究員 ; ROEMANTYO H インドネシア国立生物学研究所, ボゴール植物標本館, 主任研究員 ; RISWAN Soed インドネシア国立生物学研究所, ボゴール植物標本館, 主任研究員 ; 大橋 一慶 福山大学, 薬学部, 講師 (90213826) ; 藤岡 晴人 福山大学, 薬学部, 助教授 (20167753) ; 小林 資正 大阪大学, 薬学部, 助教授 (40116033) ; 北川 勲 近畿大学, 薬学部, 教授 (20028830) ; ROEMANTYO Harini-Muruni Senior Researcher, Herbarium Bogoriense, Research and Development Center for Bio ; RISWAN Soedarsono Senior Researcher, Herbarium Bogoriense, Research and Development Center for Bio
• 研究期間 (年度): 1994 – 1995
• キーワード: インドネシア / ボルネオ島 / 東カリマンタン州 / 民間薬 / 民間医療 / 薬用植物

研究概要

インドネシアは、東南アジア島嶼無の大部分を占め、地理的に赤道を挟んで南北に、またウォーレスラインの東西に長く延び、スマトラ・カリマンタン・イリアンジャヤなど大陸にも匹敵する大きな島からサンゴ礁に至る無数の島々から成っている。気象的には、概ね熱帯雨林気候もしくは熱帯モンスーン気候であるが、地理的変化に富んでいるためその植物資源は極めて豊富である。しかしながら、インドネシアの植物資源に対する植物生態学、植物分類学、及び天然物化学をはじめとする薬学的的見地からの分析は殆ど行われていないのが現状である。
一方、インドネシア社会の医療形態を見ると、都市部では近代医学による病院、開業医、薬局などがあるが、郡部ではドゥクンと呼ばれる世襲性の民間医が、近隣の山野に自生する熱帯薬用植物を用いて、マラリアなどの熱帯病をはじめとする種々の疾病の治療を行っている。
本学術調査は、第一次調査(昭和60〜61年度)及び第2次調査(昭和62〜平成元年度)では、ジャワ島及びバリ島における伝統的薬物ジャムゥ生薬の市場調査、ならびにヌサ・テンガラ・チム-ル州(チモール島、フローレス島、スンバ島)における民間薬、民間医療及び薬用植物調査を行った。第3次(平成2〜3年度)では、調査地域を、熱帯雨林気候でウォーレスラインの西側に位置するスマトラ島に移し、ベンクル州及びリアウ州の天然薬物調査を行った。また第4次調査(平成4〜5年度)は、香料諸島として有名なモルッカ州アンボン島、及びほぼウォーレスラインに位置し地形的変化に富む中部スラウェシ州において調査した。
そして、今回の第4次調査は、平成6年度にボルネオ島の西カリマンタン州を調査地とし、主としてサンバス県においてダヤック・イバン族の集落を訪ねた。また平成7年度は、同じくボルネオ島の東カリマンタン州においてダヤック・ベヌアック族の集落で調査を行った。両年度とも、現地の国立大学のスッタフや地元森林局職員の協力を得、極めて円滑に調査を遂行することができ、当初の計画をほぼ遂行した。
各集落においては、年輩者を訪問し、その集落で民間薬として用いられている薬草(薬用植物)について、用法・用途を含めて情報を収集した。また、民間医(ドゥクン)から、彼らの民間医療としての治療法を詳細に聞き取り調査を行った。さらに、民間薬調査及び民間医療調査で得られた情報を基に、薬用植物調査も平行して行い、両州合わせて計80種の薬用植物資料を収集することができた。
収集した情報・資料については、本学術調査研究のインドネシア側共同研究機関であるジャワ島ボゴール市にあるインドネシア科学院附属の国立生物学研究所において、分析及び植物分類学的な同定を行った。
ダヤック族とは、古来からボルネオ島に住む民族の総称である。西カリマンタン州のダヤック・イバン族(平成6年度)と西カリマンタン州のダッヤク・イバン族(平成7年度)では、彼らの民間薬・民間医療ともに大きく異なるものであった。その理由・背景については、現在インドネシア側の民族植物学者と協力して研究を進めているところである。
この様に、南米のアマゾン流域と並んで世界有数の植物資源国であるインドネシアの天然薬物調査は、新規な医薬品開発に資する化学的及び生物学的研究に寄与するに留まらず、人類にとって今や貴重な財産となったインドネシアの有用植物資源リストの作成に貢献するものである。さらに、国際共同研究体制で進める本学術調査は、日本・インドネシア両国の学術交流に大きく寄与するものである。
「インドネシアの天然薬物調査研究」を完遂するため、平成8年度以降も、本学術調査の継続を計画している。

研究成果

• [文献書誌] Isao KITAGAWA: "Taxol and Its Related Taxoids from the Needles of Taxus sumatrana" Chemical and Pharmaceutical Bulletin. 43. 365-367 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Isao KITAGAWA: "Phytochemistry of Plants Used in Traditional Medicine" Clarendon Press, 24 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Isao KITAGAWA: "Taxol and Its Related Taxoids from the Needles of Taxus sumatrana" Chemical and Pharmaceutical Bulletin. 43. 365-367 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Isao KITAGAWA: Clarendon Press. Phytochemistry of Plants Used in Traditional Medicine, 335-358 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より