研究課題
ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意の実施と主要米生産国のウルグアイ・ラウンド対策の影響を受けて世界の米生産と貿易は新たな動きを見せている。日本と韓国では、1995年から米市場の部分的な開放が開始された。台湾はWTOへの参加を目指して農業保護のあり方を改変している。また、米国では、ウルグアイ・ラウンドの農業合意の実施ならびに1996年農業法の導入により米生産や貿易が大きく変化しようとしている。韓国では、ウルグアイ・ラウンド合意に従い1995年から国内総消費量の1%相当分の米輸入を開始したが、輸入量は相対的に少ないので国内価格への影響は大きくない。しかしながらそれまで堅持してきた米自給政策を放棄し米市場を部分開放した事実が農業関係者に精神的な打撃を与えている。1990年代前半には米の需要と生産は共に減少傾向を辿っているが、生産の減少速度の方がより早いので、近い将来ミニマム・アクセスを越える量の米輸入の必要性が生じる可能性が高い。日本では中期的にも構造的な米過剰が継続し、需給バランスを維持するために減反面積を一層増加することが必用になると思われる。米の援助輸出や加工用需要等の新規需要の開発が有効な方策と考えられる。台湾は、現在は米を輸出しているが、今後稲作面積が縮小して生産量が減少し、将来は米輸入国に転ずると思われる。米国は、1996年農業法の導入により減反や不足払い制度は廃止され、直接所得補償が7年間実施されることになった。輸出補助金の削減により価格競争力が低下するので米輸出量は今後減少傾向を辿ると予想される。国内米需要は増加傾向を辿り、米輸入も増加すると予想される。世界の米需要は1995年〜2010年間に年率1.05%で、米生産は年率1.07%で増加すると予想される。生産の伸びが需要の伸びを多少上回るので、世界の米在庫は今後多少増加すると予想される。米貿易は年率0.55%で増加し、2010年に2千万トンに達する。このうちジャポニカ米の貿易比率は約10%で推移すると思われる。国際米価は名目価格では上昇するが、実質価格は低下傾向を辿ると予想される。
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