研究課題
熱帯地域にあるインドネシアでは、マラリアへの感染に抵抗性を賦与する遺伝性楕円赤血球症がこの地域に特有な遺伝病として発症し続けている。最近、遺伝性楕円赤血球症が赤血球バンド3蛋白遺伝子の異常により発症することが明らかにされた。私達はインドネシアの1離島であるバンカ島の遺伝性楕円赤血球症患者を対象として赤血球バンド3蛋白遺伝子の塩基配列を解析した。その結果、この離島の患者がバンド3蛋白遺伝子のエクソン11内の27塩基の欠失を有することを明らかにした。今回、インドネシアの他の地域での遺伝性楕円赤血球症の発症原因を明らかにするため、ジャワ島をはじめとしてロンボク島などにおいて遺伝性楕円赤血球症患者より血液を採取し、その血液よりDNAを抽出した。そして、抽出したDNAを用いてPCRなどの分子生物学的手法を用いバンド3蛋白遺伝子の異常を解析している。これとは別に、同じ熱帯地域にあるタイの遺伝性楕円赤血球症患者のバンド3蛋白遺伝子の異常を解析した。その結果、タイでもインドネシアで先に私達が報告したのと同じエクソン11内の27塩基の欠失を有する患者が存在することを明らかにした。これは、東南アジア諸国に広く同じ遺伝子の異常が分布していることを示し、遺伝子異常の発生メカニズムの解明に重要な手掛かりを与えるものであった。今後、インドネシアの他の地域でさらに詳しくバンド3蛋白遺伝子の異常を明らかにするとともに、タイの患者あるいは東南アジア諸国の患者との遺伝子異常の比較も行なう予定である。
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