1.カポシ肉腫の疫学:ケニア西部地域の3州の国立州病院および地区病院を主体にカポシ肉腫の疫学調査をおこない、1)ヴィクトリア湖沿岸部および同地域の住民にカポシ肉腫の多発が見られること、2)全悪性腫瘍におけるカポシ肉腫の頻度が急激に増加していること、3)旧来の皮膚結節型カポシ肉腫にかわってリンパ節浸潤をふくめた全身撒布性の激症型カポシ肉腫の頻度が増加していること、4)患者の年齢が若年層に移行しつつあること、5)女性における発生頻度が増加していることなどがわかった。 2.カポシ肉腫とEBウィルスの関連性:EBウィルスとの関連性が明かなバ-キットリンパ腫および小児ホヂキン病は両疾患ともにヴィクトリア湖周囲に多く見られ、その分布はカポシ肉腫の分布と類似しており、これらの疾患のなんらかの関連性が示唆された。また、カポシ肉腫における組織レベルでのEBウィルスの存在は今回の調査で得た、約40例のカポシ肉腫標本を材料に、免疫組織染色法、PCR法、in situ hybridization法をもちいて検索中である。次年度の現地調査で収集する標本を含めて継続して検索する予定である。 3.カポシ肉腫の細胞由来およびその性状:現地で得た材料を主体に免疫組織染色法と電子顕微鏡をもちいてその解析をおこなっており、カポシ肉腫の初期病変では血管内皮細胞への分化傾向を示す間葉系細胞がその多くを占めるが、病変が進展するにつれ、カポシ肉腫を構成する細胞の多くが特定の細胞への分化を示さなくなるという予備的な結果得た。これについても次年度の標本をふくめ、継続して検索する予定である。
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