研究課題/領域番号 |
06041088
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
新田 栄治 鹿児島大学, 教養部, 教授 (00117532)
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研究分担者 |
CHALIT Chaik コンケン大学, 人文・社会科学部, 講師
西谷 大 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助手 (50218161)
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キーワード | 製塩 / 塩 / 森林破壊 / 自然破壊 / 製塩遺跡 / 社会再編 |
研究概要 |
東北タイで行われている伝統的な内陸部製塩の技術に関する調査、および生産と消費にまつわる社会人類学的な調査を、東北タイの数か所で実施した。1991年に実施した発掘のさいには、遺跡の近くで製塩が行われており、他の地域でも行われていたが、今回の調査時にはすでにほとんどが消滅、あるいは消滅寸前であることが明かとなった。その最大の原因は、燃料となる薪が入手でなくなったことである。背景にタイの大規模な森林破壊、自然破壊が徹底されたことがある。また従来は不毛の無価値な土地とされた製塩場の土地が、タイの経済開発の進展とともに、工場用地、住宅用地とし価値あるものとなり、製塩場の土地が転用されている。塩の消費者の動向の調査結果では、伝統的製塩による塩は味がよいと高い評価をうけ、需要も高い。需要があるにもかかわらず、生産が不可能になってきたために市場から消え、供給できなくなったことが明かとなった。また政府指導による新しい製塩設備が導入された結果伝統的製塩が消滅している。このような塩をめぐる自然環境の変化、社会状況の変化が、生産者自身の社会組織にも大きな影響を及ぼしている。土地なし下層民の職業となり、組織再編が急に進んだ。 製塩技術については、戯水濾過槽がなにであるか、丸太くり抜槽とその変異型か、あるいは土抗槽かの大別2類型であるが、基本的には全く同じ方法によっている。 ノントゥンピーポン遺跡の発掘の結果、この遺跡が短時間で放集されたことが分かったが、今回の調査により、製塩の途絶には森林破壊が決定的要因をなすこと、衰退にともない社会再編が激化することが明かとなった。製塩遺跡と現代の伝統的製塩との比較研究に大きな成果をあげた。
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