研究課題/領域番号 |
06041093
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山岸 哲 大阪市立大学, 理学部, 教授 (80101286)
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研究分担者 |
永田 尚志 国立環境研究所, 主任研究員 (00202226)
日野 輝明 森林総合研究所, 農林水産技官 (80212166)
江口 和洋 九州大学, 理学部, 助手 (60136421)
下田 親 大阪市立大学, 理学部, 教授 (80047290)
森岡 弘之 国立科学博物館, 動物研究室, 室長 (30000128)
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キーワード | マダガスカル島 / オオハシモズ科 / 共同繁殖 / 鳥類社会 / 種内関係 / 種間関係 / DNAフィンガープリンティング / ミトコンドリアDNA |
研究概要 |
前年度同様アンピジヨロアの約1平方キロの調査区で、アカオオハシモズの社会構造を調査した。前年度成鳥33、幼鳥14個体に標識し、それぞれ29(88%)、3(21%)個体が生残していた。本年度新たに82(成鳥51、幼鳥31)個体から採血した後に標識して放鳥した。この地域内で38グループの繁殖を確認し、そのうち29グループの巣を発見して、メンバー構成を明らかにした。一夫一妻ペアが18グループ、一夫一妻ペアに亜成鳥雄のヘルパーつきが4グループ、二夫一妻が6グループ、二夫一妻に亜成鳥3個体のヘルパーつきが1グループであった。前回の調査でアカオオハシモズの変異に富んだ共同繁殖の実体があきらかになったが、今回の調査ではさらに多くの知見が得られた。すなわち、前年生まれの雄は親元に留まりヘルパーとなった。さらに前年のヘルパーであった雄のいくらかは2歳になっても独立せず、親元に留まりヘルパーのままであった。しかし、1歳時と異なり、羽毛が成鳥と同じになったためにしばしば親の攻撃を受けていた。前年の幼鳥のうち調査地で確認できた雌は1個体のみで、親のなわばりから分散してつがいを形成していた。成鳥2雄の二夫一妻のグループでは雄間に順位が認められ、優位雄(α雄)は劣位雄(β雄)をしばしば攻撃した。しかし、攻撃性の程度はグループによって差が大きかった。前回調査では、α雄とβ雄が同一雌と交尾した観察例も1例あった。今回少なくとも二夫一妻の2グループは両親と息子から構成されており、これらのグループでは優位雄(父親)の劣位雄(息子)への攻撃は観察されたが、交尾は優位雄のみで観察された。今後は1グループ内に複数雄が存在する場合の血縁関係が重要であり、採集した血液標本のDNAのマイクロサテライトの分析から、最終年度には、婚姻システムのこの大きな種内変異の意味づけが可能になるであろう。
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