研究課題
平成7年度の研究実績を研究対象国毎に箇条書きにまとめる。研究課題は「東南アジアにおける国民国家、民族集団及び宗教の係わりに関する文化人類学的研究」である。1.タイ国に関しては、綾部恒雄がタイ国イサーン地域(東北タイ)に分布するプ-タイ族を中心に、そのエスノヒストリーを分析することによって、これまでに調査を重ねてきた黒タイ族との相違を明確にするとともに、プ-タイ独自の民間信仰が、タイ国の国家宗教としてのテラヴァダ仏教に習合していく過程を明らかにした。またソンブーンは、チェンマイ地区の華人系ムスリム・コミュニテイの調査を通して、民族集団としての華人と一神教としてのムスリムの結びつき及びその国民化の過程を明らかにした。2.インドネシアに関しては、スリヤディナタが、中部ジャワの華人社会にみられる儒教復興運動とイスラム国家インドネシアの国民化との係わりを分析した。また中島成久はミナンカバウ社会の母系制が、イスラム法、国家法との関係で次第に崩れつつある状況を明らかにした。3.フィリピンでは、レスリ-・バウゾンがミンダナオの少数民族マヌボの調査によって、その種族的性格を明らかにし、国民文化形成との係わりを考察した。また荒木美智雄はボナハウ山麓の千年王国運動グループの調査を通して、植民地化と国民国家形成との係わりを明らかにしている。森正美のパラワン島マラナオ族の慣習法、イスラム法、国家法の三重構造の研究も国民国家の実態を明らかにする上での著しい貢献であろう。4.マレーシアについては、シャムスルのサバ地区における華人社会の研究が国民国家の統合性と周縁性の問題について著しい実績をあげた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (9件)