研究課題/領域番号 |
06041123
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
今井 弘民 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助教授 (10000241)
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研究分担者 |
高畑 尚之 総合研究大学院大学, 教授 (30124217)
CROZIER R.H. オーストラリア La Trobe Univ., 遺伝部門, 教授
TAYLOR R.W. オーストラリア キャンベラ CSIRO研究所, 昆虫部門, 名誉研究員
平井 啓久 京大霊長類研究所, 進化系統部門, 助手 (10128308)
山本 雅敏 京都工芸繊維大, 繊維学部, 助教授 (10142001)
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キーワード | 染色体進化 / 系統進化 / 昆虫 / アリ類 / rDNA / テロメア / FISH法 / 最小作用説 |
研究概要 |
本学術調査は、研究代表者今井が提唱した真核生物の染色体進化に関する新学説「最小作用説」(Imai et al.,1986)の検証を行うため、オーストラリア産キバハリアリ(Myrmecia)類を用いて、分子・細胞・及び系統遺伝学の諸側面から学際的に調査研究し、染色体進化のメカニズム、法則性、生物学的意味等の解明を目的としている。キバハリアリはオーストラリア大陸東部山岳地帯を中心とし、一部南西部丘陵地帯にまたがる。本調査では、調査地域を南部と北部に分割し、平成6-7年の2年度に渡って調査を行う。平成6年度はキャンベラを拠点にその周辺、タスマニア、及びエスペランサの南部諸地域を調査した。 17種26コロニーのキバハリアリについて、通常の核型分析の他にリボソームDNA(rDNA)とテロメアをFISH法を用いて調査した結果、次の3点が明らかになった。(1)キバハリアリ類は染色体的に低染色体数種(2n=2-8)、中染色体数種(2n=10-32)及び高染色体数種(2n=38-76)の3群に分類され、核グラフ解析から低→中→高染色体数種と染色体が増加する方向に進化する。(2)rDNA保有染色体数が低染色体種では2本であるが、中染色体数種で2-10本(平均5.6)、高染色体数種は6-19本(平均10.9)と次第に増加する。(3)アリ類のテロメアがTTAGG型で、総ての染色体の両末端のみを被覆し介在部には存在しない。(2)のDNAのゲノム内拡散現象は不可逆的変化で(1)の核型分析の結果と整合し、共に最小作用説を強く支持することが分った。また(3)の知見は、アリ類のテロメアがほ乳類のTTAGGG型とは異なる(新発見)ことを意味し、最小作用説での染色体突然変異の発生機構を分子レベルで解明する上で重要な手がかりを与えることが分った。
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