研究課題
イチイ科植物から単離されるタキソ-ルは乳癌、卵巣癌等に対して強い抗腫瘍活性を持つことと作用機序の特異性の面から今日最も注目されている天然由来の抗癌剤の一つで、1990年代の抗癌剤と称されている。最終年度の今年度もタキソ-ルと同等もしくは優る新規タキソ-ル類似抗癌活性物質の確保と開発を目的とし、中国産イチイ科植物を調査研究の対象とし調査研究を継続し、以下の実績を残した。中国雲南省に広く分布し生育するイチイ科植物Taxus chinensis,Taxus chinensis ver.mairei並びにTaxusyunnansisの成分検索を行ない本年度も数種の新ジテルペン化合物の単離とそれらの構造解明に成功した。このような複雑な骨格で多くの異なる官能基を有する化合物の構造解明には非破壊的手法としての2次元核磁気共鳴法が特に効果的で、HMBC並びにROSY法により置換基の結合位置を解明した。また一部の化合物についてはX-線解析により最終的に構造解明を行なった。これらの新化合物はやはり我々が以前初めて天然から単離したtaxchinin A型の5/7/6系の新骨格化合物であった。この型のジテルペンは溶液中で2種以上の立体配座の混合物として存在することが前年度の研究により明かとなっているが、本年度もそれらの詳細な解析を行なった。タキソ-ルのC-13位側鎖(フェニルイソセリン)とオキセタン環が抗癌活性に必須であるとされているが、本研究で単離された新化合物へこれらの官能基の導入のため、中国雲南省萠江鳴音保炉区において採集したTaxus chinensisからの活性物質への化学変換に必要なC-13位に水酸基を持つ5/7/6型化合物の大量の単離を開始した。それと同時にタキソ-ル誘導体の立体配座データや計算化学データに基づく人工設計抗癌剤の開発に関する検討もあわせ行ない、活性に必須の二つの構造ユニットを炭素数2〜7のメチレン鎖を用いて組み込んだモデル化合物を合成しin vivoでのチューブリン阻害検定試験に供した。
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