研究概要 |
日本の西南部流行地では毎年数百例のATLとHAMが発生しており,その原因であるHTLV-1は国民の健康を損う重要なウイルスである.キャリア母親が長期母乳哺育を行うと約20%に感染がみられ,この感染は母親の抗体価と関係しているようにみえる.性的接触による感染は,性的関係をもつ相手の数や,相手の男性の抗体価と関係している.この研究の目的は,日本人及びハワイやカリホルニアに在住する日本からの移民をめぐるHTLV-1の感染様式に対する環境・社会・生活様式の影響を確かめることにある. 作業仮説1)移民の間では,性的感染よりも母子感染の方が重要である. 2)HTLV-1の性的感染は日系アメリカの方が低い? Murphyらはサンフランシスコ地区で行ったREDS(Retrovirus Epidemiology Donor Survey)で,流行地である西南部日本から移民した子孫の日系アメリカ人のキャリア率が低下を報告した.本研究では,Murphyらの日系アメリカ人の研究の質問書の形式を採用し,人種,性的接触者の数及びその相手の出身地等を含めた危険因子の内容,流行地出身者との性的接触回数,コンドーム等の感染阻止手技,対象者や子供の栄養方法,流行地と家族関係の歴史,移民の歴史,輸血歴,麻薬常用歴,危険因子回避のための努力などを質問した.ハワイ,カリホルニア在住の日系アメリカ人キャリア約40名,長崎のHTLV-1母子感染のコホート約100名の面接と採血を完了した.現在,血液検査を行っており,質問のデータをコンピュータに入れ分析をしている.
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