研究分担者 |
SHI Yan 北京協和大学, 天津血液学研究所, 助手
DE The Guy フランス, パスツール研究所, 教授
GALLO Robert NIH(米国国立衛生研究所), 研究部長
松岡 雅雄 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (10244138)
山口 一成 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20128325)
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研究概要 |
1.研究の背景・目的 ヒトT細胞好性ウイルスI型(HTLV-I)は成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-I関連ミエロパシー(HAM/TSP),HTLV-Iぶどう膜炎などのHTLV-I関連疾患の原因ウイルスである。本研究ではHTLV-IおよびHTLV-IIの世界的な拡がりの調査と共に、HTLV-I関連疾患の実態を調査することが目的である。環境,気候,風土,人種の異なる日本と外国(ブラジル,中国,ホンジュラス,コロンビア等)でのATL,HTLV-I関連疾患の発症状況を疫学・臨床で比較することで、発症のメカニズム補助因子,遺伝的素因を明らかにする。そしてこの比較を踏まえて諸外国におけるHTLV-I/II感染対策を提言する。国際的に通用するATLの診断基準,HTLV-I感染の予防,ATLの治療について共同研究を行う。この2年間米国NIH,仏パスツール研究所の協力を得ながら、中国,ブラジル,ホンジュラス,コロンビア,メキシコでの実態調査を行った。 2.研究成果 1)中国:天津市で男性516、女性382、計898名のサンプルを収集した(表1)。内訳は白血病586例、肝炎50例、神経の疾患107例、Bolld donor 155例である。PA、EIA、WB法すべての方法でHTLV-I抗体が陽性であった者は52歳の男性白血病患者(AML)1例のみであった。 2)ブラジル・ブラジルはHTLV-I感染のみならずHIV感染も蔓延しており、HTLV-IとHIVの重複感染例が多数存在する。またATLを発症した重複感染者も既に3例存在しており、HIV感染による免疫不全がATLの発症を促進していることが示唆される。HIV感染がHTLV-Iの感染にどのような影響を及ぼすか、HTLV-Iプロウイルス量、HTLV-I感染クローンの解析を行うことを予定している。また若年発症のATLもブラジルでは報告されており、ATL発症を促進する何らかの因子が環境に存在することが示唆される(共同研究者Maria Pombo Oliveira)。 3)ホンジュラス:114名のサンプル(黒人:主にカリブ海沿岸地域に住む62例、Prostitute52例)が検討された。黒人62例中11例(17.7%、男2、女9)がHTLV-I陽性、そのうち女性の1例はHIVも陽性であった。Prostitute52例中HTLV-Iは全例陰性、1例がHTLV-II陽性であった。中米ホンジュラスも沿岸地方はHTLV-Iのhighly emdemic areaと考えられる(共同研究者Hose Dubon)。 4)コロンビア:コロンビア南アンデス地方(カリ近郊)のAmerindianの一家族にHTLV-IIの感染を見つけた。35歳のBlood donorとその両親がHTLV-II陽性であった。HTLV-IIの夫婦感染,母子感染を示唆し、さらにコロンビアでもHTLV-I/IIのdonor screeningが必要であることを示唆する結果である。 5)メキシコ/ユカタン州のマヤ人におけるHTLV-IIの予備調査を行った。
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