ブラジル在住日系人の食生活とがんに関する疫学的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06042020
• 研究機関: 国立がんセンター
• 研究代表者: 津金 昌一郎 国立がんセンター研究所, 支所臨床疫学研究部, 部長 (40179982)
• 研究分担者: KOWALSKI Lui A. C. Camargo病院, 部長 ; BRENTANI Ric A. C. Camargo病院, 総長 ; LAURENTI Ruy サンパウロ大学公衆衛生学部疫学教室, 教授 ; 若林 敬二 国立がんセンター研究所, 生化学部, 部長 (60158582)
• キーワード: 日系移民 / ブラジル / 発がん要因 / 食生活 / 生体指標 / 断面調査 / 症例対照研究 / コホート研究

研究概要

(1)断面調査:サンパウロ在住日系人の無作為抽出標本について、食事摂取頻度調査や血液・尿などの分析により食事摂取状況の推定を行い、日本国内在住者との比較を行った。40歳代男性の日本の5地域との食品摂取頻度の比較をすると、日本のいずれの地域よりも高い頻度で食べられている食品は、コーヒー、砂糖、パン、果汁牛肉、大豆以外の豆腐、牛乳・乳製品、チーズなどで、いずれもブラジルの食生活において典型的な食品で、ブラジルの食文化を導入した結果と思われた。また、日本のいずれの地域よりも低い頻度で食べられている食品は味噌汁、漬物、緑茶、麺類、きのこ類、海藻類、豚肉、レバ-、魚介類、大豆製品などで、これらは逆に日本の食生活において典型的な食品であった。また、サンパウロ在住日系人の血清セレニウム濃度(96ng/ml)は、日本の5地域(134〜146ng/ml)に比較して有意に低いという結果が得られた。
剖検例約5例について種々の臓器から組織を摂取すると同時に、家族に対し、生前の嗜好や食生活について聞き取りを行った。
(2)症例対照研究:サンパウロの主要な13病院から、日系人胃癌患者100名、日系人対照100名、非日系人胃癌250名、非日系人対照250名が登録され、面接と血液の採取が終了した。現在、2つのデータ・セットについての解析を行っている。また、リオ・デ・ジャネイロで実施した肺がんの症例対照研究についての成果を刊行した。
(3)コホート研究:記録法による秤量食事調査の準備のためのミーティングを、サンパウロ(平成6年12月)と日本(平成7年2月)において開催し、平成7年6月から実施することになった。
また、コホート研究のために日系人約1万人のデーター・ベースを作成した。

研究成果

• [文献書誌] Tsugane,S.,et al.: "Lifestyle and health related factors among randomly selected Japanese residents in the city of Sao Paulo,Brazil,and their comparisons with Japanese in Japan" Journal of Epidemiology. 4. 37-46 (1994)
• [文献書誌] Karita,K.,et al.: "Serum selenium levels in middle-aged Japanese men in Sao Paulo,Brazil and in five areas in Japan." Biomedical Research on Trace Elements. 5. 77-84 (1994)
• [文献書誌] Suzuki,I.,et al.: "Risk factors for lung cancer in Rio de Janeiro:a case-control study." Lung Cancer. 11. 179-190 (1994)
• [文献書誌] Sugimura,H.,et al.: "Cytochrome P450 IAI genotype in lung cancer patients and controls in Rio de Janeiro,Brazil" Cancer Epidemiolgr Biomarkers & Prevention. 3. 145-148 (1994)
• [文献書誌] Hamada,G.S.,et al.: "The heme-binding region polymorphism of cytochrome P450IA1(CypIA1),rather than RsaI polymorphism of IIEl(CypIE1),is associated with lung cancer in Rio de Janeiro." Cancer Epidemiolgr Biomarkers & Prevention. 4. 63-67 (1995)