研究課題
平成6年度最大の実績は、7月24、25日に小樽商科大学で開催した共同研究会および国際コンファレンス「転機に立つ金融・証券規制く…日米比較を中心に」にある。この共同研究会、国際コンファレンスでは、研究参加者の分担研究を基礎に、1980年代以降の日米金融・資本市場の自由化、証券化、および国際化などの変貌過程と、それに対応する金融危機管理、資本形成促進、および福祉国家機能を含む財政金融政策、規制政策が多面的に検討された。例えば研究代表者井村進哉は、研究協力者(平成7年度から研究分担者)ジェーン・ダリスタ氏との共同研究を通じて、バブル崩壊にともなうリスクは、アメリカで銀行本体に集中的に現れているのに対して、日本ではむしろ銀行・金融機関の(共同)子会社であるノンバンクに集中的に現れている。これは、金融システムの産業組織的な特性の相違(日本の統合の垂直的性格、アメリカの統合運動の水平的な性格)が、一方でアメリカにおいては預金保険制度(公的資金)を利用した破綻金融機関処理を可能にし、他方で日本では垂直的な金融集中度が高いためにノンバンク問題にみられるようにリスクの分散をむしろ困難にしているという知見を得た。また研究分担者北條裕雄とマーシャル・ブルームは、1980年代以降の日米の株式所有構造を比較研究を進め、日本の株式持ち合い比率の低下、企業の銀行離れが、従来企業集団の中核として位置してきた銀行のモニタリング機能を低下させ、バブルの異常な膨脹の一因になったという知見を得ている。また同じく研究分担者渋谷博史は、以上の議論を総括し、従来触れられることのなかった金融・資本市場双方にわたる規制政策の変遷を歴史的に位置づける試みを展開している。以上の研究をもとにして今年度成果は井村・北條・渋谷編『日米金融規制緩和の再検討(仮題)』(日本経済評論者)1995年6月刊行予定)を刊行する。
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