研究課題/領域番号 |
06044016
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
重野 芳人 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助教授 (70108570)
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研究分担者 |
EVANS J.W. カリフォルニア大学バークレー校, 資源材料工学科, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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キーワード | 活性炭 / メタン / 熱分解反応 / CVI / コ-クス / ポア- / CO_2酸化 / CDQ / Chemical Vapor Infiltration |
研究概要 |
1.研究目的 セラミックスや炭素材のマトリックス空隙をCVD(Chemical Vapor Infiltration)により充填し、機械的強度や反応性の向上を図る方法はCVI(Chemical Vapor Infiltration 又はImpregnation)と呼ばれ、工業的に広く利用されている。その応用の一つとして、炭素材マトリックス間の空隙を炭化水素の熱分解を利用して充填する方法がある。例えば炭素繊維間を熱分解炭素で充填しマトリックスの機械的強度を向上させた材料は航空・宇宙あるいはスポーツ関連の材料として使用されている。 冶金への応用例としては、コ-クスの品質改良がある。たとえばコ-クスの機械的強度を上昇させることにより輸送中の粉化を防止することが可能である。また高炉操業において、コ-クスの耐酸化性を適度に向上することが可能であれば、反応性の高い(酸化されやすい)低品位コ-クスを高炉で使用が可能となる。そのため炭化水素の熱分解を利用し、コ-クスの耐酸化性を向上させ、CSR(反応後強度)を向上させることを目的としコ-クスの炭素充填を行った。 2.研究成果 2.1冶金コ-クス、成型コ-クスの微細気孔炭素充填 冶金コ-クスと成型コ-クスを試料として炭素充填した試料は元のコ-クスに比較し反応後強度(CSR)が56から77に大きく上昇することを確かめた。これは対CO2反応性(CRI)が32から18に減少することに起因すると考えられる。この現象を更に詳細に解析するため、マイクロ気孔からマクロ気孔までの気孔サイズ領域に於ける炭素充填およびその後の酸化反応後に於ける気孔構造変化を観察した。その結果、コ-クスの場合酸化の際にマイクロ気孔が形成されるが、メソポア-への炭素充填がマイクロ気孔生成を阻害するために酸化速度の低下を抑制し、結果的にCSRの上昇につながるという結論を得た。 2.2活性炭の微細気孔の構造変化 しかし、分子レベルで考えた場合、酸化反応は更に微細な気孔(マイクロポア-)の壁表面で進行すると考えられる。これはすべての気孔壁表面にマイクロポア-が存在し、全表面積のうち、マイクロポア-が大部分を占めるからである。コ-クス中の気孔もマクロからマイクロポア-まで分布しているが、試料に占める微細気孔(メソあるいはマイクロポア-)の体積割合が小さいため測定誤差が大きくなり、反応の影響を明確にするのが困難である。それに比して、活性炭は特にマイクロポア-の体積割合が大きく、当然他の炭素材に比較し表面積もはるかに大きい。本研究では、水銀ポロシメータと窒素吸着法により各反応過程における気孔サイズ分布の変化を調べ、メタン熱分解により析出した炭素が活性炭中の主に微細気孔をどのように充填し、またそれが耐酸化性にどのような効果を有するのかを解明することを試みた。 その結果次のような結論を得た。 2.2.1 マイクロポア-は気孔充填の結果、体積面積共に1/1000〜2/1000に減少する。特にサブマイクロポア-は気孔直径0.7nm近傍に気孔が集中しており、析出炭素により、この領域の気孔はほぼ完全に充填される。CO2による酸化反応により、充填した炭素は酸化され、再びマイクロポア-が生成されるが、炭素充填のしない試料に比較し、気孔の体積面積共に拡大の割合が小さく、マイクロポア-の充填が耐酸化性の上昇に大きな役割りを果たしている。 2.2.2 メソポア-に関しても同様の現象が観察されたが、炭素充填後の体積面積共にオリジナル試料の3%程度にまで減少したに過ぎず、充填後の試料の酸化に伴う体積面積の拡大はオリジナル試料を酸化した場合の約1/3となり、酸化抵抗上昇に寄与するもののマイクロポア-程の効果はないと考えられる。 2.2.3 炭素充填およびその後の酸化に伴うマクロポア-のサイズ分布の変化は余り顕著ではなく、酸化抵抗の上昇への寄与は相対的に非常に少ないと考えられる。 3.熱分解炭素を利用したコ-クス改質プロセスの実機への適用 コ-クスの事後処理を行うための反応容器としてCDQを想定し、各種炭化水素を炉の下部から導入し、炭化水素熱分解反応に伴う吸熱反応によるコ-クス冷却と炭素充填を同時に行うプロセスを考えた。その評価のための一次元数学モデルを作成し、炭素充填のための最適条件を模索した。計算結果からは炭化水素としてメタンを使用すると、反応速度が遅いために十分な炭素充填が行えず、むしろより高次の炭化水素(プロパンやブタン等)がはんのうには有利であることが明らかになった。しかし今後これらのガスを使用した場合の経済性も考慮する必要がある。またガズの代わりにタール等の液体の使用も考えられるが、大量に発生する煤の抑制方法が問題となる。
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