研究課題/領域番号 |
06044021
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末光 眞希 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (00134057)
|
研究分担者 |
SCHWAB Claud 国立科学研究所, 半導体物理学研究所, 教授
庭野 道夫 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (20134075)
CLAUDE Schwab C.N.R.S,Laboratory of physics and application of semiconductors Professor
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
キーワード | 砒化ガリウム / 半絶縁性 / 点欠陥 / 光学物性 / 電子スピン共鳴 / EL2 / フォトクエンチング効果 / 光伝導度 |
研究概要 |
本研究の目的は半絶縁性GaAs結晶の高品質化をめざし、EL2を中心とする固有点欠陥の物性を明らかにし、それらの制御法確立に対する指針を得ることである。当初計画では第一年度に固有点欠陥の物性研究を行い、第二年度にその成果を踏まえてその制御法の確立に進む予定であった。しかし初年度だけの成果では制御すべき欠陥の同定が不十分であるとの判断に立ち、第二年度(平成7年度)も引き続き、固有点欠陥の物性研究に集中した。とくに本年度は半絶縁性GaAsの半絶縁化機構において重要な役割を果たすEL2準位の低温光照射消失(Photoquenching:PQ)効果の発現機構を中心に研究を行った。 PQ効果は90K以下の低温で近赤外光を照射するとEL2準位が持つ光学的、電気的性質が消失する効果で、EL2準位を特徴づけるものである。従来PQ効果はEL2準位の準安定状態遷移と言われてきた。しかし、最近ではEL2以外の準位の関与を示唆する考えもあり、これがEL2準位そのものの準安定化なのか結晶系全体の準安定化なのかの判別を含めその機構解明の詳細は依然不明である。われわれは前年度の研究結果から、このPQ効果に複数の準位が関与していることを見出しており、その機構解明は半絶縁性GaAs結晶の高品質化にとっても重要であると考えた。 本年度の研究で明らかにした点は次の通りである。 ●EL2のPQ効果はEL2単独の現象ではない。 外因性アクセプタである炭素密度を変化させた一連の試料を用意してそのPQ効果を調べたところ、EL2とは単独した点欠陥である炭素アクセプタがEL2のPQ効果を促進する作用を持つことを初めて明らかにした。 ●EL2のPQ効果にはある深いアクセプタ準位が関与している。 室温から液体He温度に至る広い温度範囲にわたりPQ効果の温度依存性を調べ、低温ほどPQ効果が促進されることを見出した。そしてこの温度効果は、価電子帯から70-80meV上にある深いアクセプタ準位(Actuator Level:AL)が中性状態にある時にEL2のPQ効果を促進する-と考えることで定量的に説明できることを明らかにした。 ●PQ効果のALモデルを構築した。 ALモデルはPQ効果に対する炭素アクセプタの効果および温度効果を統一的に説明する。 ●ALの存在を実験的に確認した。 結晶内の深い諸準位の荷電状態を調べる熱刺激電流(Thermally Stimulated Current:TSC)測定を同一試料群に対し行ったところ、ALの活性化エネルギーに対応する温度位置にホール放出に伴うピークを観測し、ALの存在を実験的に確認した。またこのホール放出はPQ光を照射してはじめて観測されることから、低温でのPQ光照射はこのALのホール捕獲という電荷移動を引き起こしていることが明らかになった。 ●PQ光照射はAL以外の諸準位への電荷移動を引き起こしている。 PQ光照射に伴うTSCスペクトルの経時変化を見たところ、さらにAL以外への電荷移動も観測された。それぞれの準位の同定とPQ効果における役割の解明を現在行っている。 ●光伝導率測定も光吸収測定の結果を支持した。 同一試料群に対し光電導率(Photoconductivity:PC)測定を行ったところ、EL2の準安定状態遷移に伴うPCの減少・増大を観察した。一方、PCを示さない低炭素試料ではそのようなPCの変動がなく、PCがEL2準安定化遷移を反映することを確認した。 ●EL2とAs_<Ga>とは異なる点欠陥である。 EL2に対するこれら炭素密度・温度依存性や近赤外吸収法および光伝導率で測定されるEL2と、電子スピン共鳴法で測定されるAs_<Ga>とは全く異なる光応答性を示し、この両者が異なる点欠陥であることが明らかになった。
|