研究概要 |
平成6年度にほぼ完了した有限区間でのハミルトニアン形式による量子色力学の定式化は,興味ある位相幾何学的構造をもつことがわかり,真空の構造や閉じ込めの機構に関係しているか否かを調べている。1+1次元での可解な場の理論との類似性に注目しながら研究を進めているが,まだ結論を得るには至っていない。この定式化でのU_A(1)アノマリーの問題は,7月から8月にかけて矢崎,太田がエルランゲン大学を訪問し,レンツ,ティース教授らと共同研究を行った結果,次のようなことがわかった。アノマリーは場の理論における発散と密接に関係し,通常,U_A(1)アノマリーはゲージ不変な正則化によって得られると考えられている。しかし、時空点の分離による正則化を詳細に検討した結果,アノマリーを得るためにはゲージ不変性だけでは不十分で、ゲージ理論そのものを構築する際に用いられる最小原理(mcnimal princcple)に対応するものの必要性が示唆された。この新たな要請のもつ意味,格子ゲージ理論における正則化との関係等を現在検討中である。また,研究協力者,森松は10月にエルランゲン大学を訪れ,ハミルトニアン形式でのBprn-Oppenheimer近似の可能性を検討した。 一方,平成6年度末にレンツ教授が東京大学に滞在した時検討をはじめた,格子ゲージ理論におけるguench近似の意味については,簡単な少数自由度の場合に調べた結果,結合定数のくり込みの形で表される場合があることがわかった。この結果がより一般的な意味をもつか否かを検討中である。 なお、上述の研究と併行して,矢崎は低エネルギー有効理論としての南部・ジョナ・ラジニオ模型での重粒子の研究を,太田はスカ-ム模型での光発生の研究を行った。
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