研究分担者 |
浅井 健一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (10262156)
岩田 覚 京都大学, 数理解析研究所, 助手 (00263161)
土谷 隆 統計数理研究所, 助手 (00188575)
稲垣 宏 豊田工業高等専門学校, 助手 (40213110)
今井 桂子 中央大学, 理工学部, 助教授 (70203289)
浅野 孝夫 中央大学, 理工学部, 教授 (90124544)
杉原 厚吉 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (40144117)
EDELSBRUNNER エルベルト イリノイ大学, 工学部, 教授
RAPPAPORT Da クィーンズ大学, 工学部, 副教授
TOUSSAINT Go マッギル大学, 理学部, 教授
AVIS David マッギル大学, 理学部, 教授
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研究概要 |
本科学研究費により平成6,7年度に渡って実施した国際共同研究について,その成果を報告する.この研究の中心テーマである計算幾何学は,幾何構造を有する図形などの情報処理問題を高速に解くアルゴリズムを,情報科学・情報工学でのアルゴリズム設計の立場から統一的に研究する分野である。これまでに,平面図形・空間図形に関係する問題を中心に,既存手法では解けなかったような大規模な問題を実用的時間内で解いたり,新たに生じてきた問題に対する新アルゴリスムを提供したりなどの有用な成果を上げてきた.本研究グループは,ここ十数年に渡って個々の研究者がそれぞれの国を訪問し,数カ月滞在するなどして共同研究を行ない,かなりの成果を上げてきた.しかし,個々の研究者での交流が主であり,グループ全体での研究会などの開催などは,国際会議などの前後の極く短期間の研究集会だけであり,個々の研究レベルの高さを,国際的な共同研究環境整備ができておらず,生かしきれていなかった面があった.それを本研究により,統合されたことによる成果を上げ,融合による新展開を図ることができた. 具体的には,本科学研究では,グループの各分担者の研究成果が,普遍的な基礎分野での成果から応用に直結した大規模プログラムまで広範囲に渡ることに基づき,それらを融合させて,計算幾何学のみならず情報科学・工学の基礎理論での新展開を図ることを目標に国際共同研究を行なった.具体的成果としては,計算幾何ワークベンチ,特に3角形分割などの基本的幾何構造に関するパッケージ開発ができ,理論的にも本科学研究費の共同研究により一定期間に渡っての共同討議を行ない,今後に続く研究成果が得られた.具体的成果については,論文リストを参照されたい.特に,3角形分割のパッケージは,関連分野に関する北米で最も大きな会議のACM計算幾何会議において,論文発表を2件と,さらにビデオによるデモンストレーションを行なう予定である.このプロジェクトの大元は,カナダ側代表のAvis教授による逆探索と呼ばれるアイデアで,これを本科学研究を通じて日本側の最適化技法と融合させ,新展開を図ることができた.頑健な幾何計算などでも当初の目標通りの成果を上げることができた.また、本共同研究により,日本とカナダ・アメリカの研究交流を通じて,情報科学・情報工学の分野における日本での研究の特徴を生かした貢献を示せた. さらに,本共同研究を通して,D.Avis,D.Rappaport,H.Edelsbrunner教授との東京での共同研究が実現し,また日本側からは研究分担者として初年度に稲垣宏講師,岩田覚助手,また研究協力者の稲葉真理,小野剛氏が,さらに最終年度では浅野孝夫教授,浅井健一助手の北米訪問が実現され,McGill大学を中心に共同研究・討議を行なった.また,北米側のグループの来日については,共同研究の立場から海外旅費は全て向う持ちで,日本側からは一部の場合に国内滞在費を支出するにとどめた.さらに、カナダ側のグループの共同研究者であるJ.M.Robert,H.Everett副教授,さらにはH.Edelsbrunner教授が短期滞在した経験のあるアジア香港からS.-W.Cheng,M.Golin副教授らの来日へと交流が発展し,計算幾何のテーマに絞った共同研究会を開催することもできた.このように,本研究ではグループ内での大きな成果を着実に上げることはもとより,より広くアジア・環太平洋地域の研究者まで含めた交流を可能にし,国際研究協力の実を上げた.本研究の成果は既に日本語の教科書としても発表され,また開発されたパッケージについては,まずは国際会議で発表の後,インターネットなどを通じて,広く公開していく予定である.
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