研究分担者 |
須藤 剣 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員
モルティエル ヘールト ゲント大学, 情報工学研究所, 助手
霜垣 幸浩 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (60192613)
中野 義昭 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (50183885)
バーツ ルル ゲント大学, 情報工学研究所, 助教授
羅 毅 清華大学, 電子工程系, 教授
コルドレン ラリー カリフォルニア大学, サンタバーバラ校, 教授
ラガッセ ポール ゲント大学, 情報工学研究所, 教授
MORTHIER Geert Dept.of Information Technology, University of Gent, Belgium
BAETS Roel Dept.of Information Technology, University of Gent, Belgium
COLDREN Larry A. University of California, Santa Barbara, USA
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研究概要 |
1.利得結合係数測定法に関する研究:利得結合分布帰還型(DFB)レーザにおける利得結合係数は,最も重要なパラメータであるにもかかわらず、これまでその測定法が存在しなかった.ここでは,DFBレーザのしきい値以下ASEスペクトルと理論スペクトルとを最小二乗法を用いてフィッティングし,屈折率/利得結合係数を含む多数のパラメータを抽出することを,ゲント大学と共同して研究した.その結果,従来結合係数の測定が不可能であった部分利得結合DFBレーザにおいて例えば,屈折率結合係数56.4cm^<-1>,利得結合係数22.3cm^<-1>という値を測定抽出することに成功している.この手法によれば,端面の反射率および位相も知ることができる.さらに,しきい値以下の異なるバイアスレベルでスペクトルを測定すれば,線幅増大係数も抽出可能である. 2.InP基板上InGaAs/InGaAlAs歪み量子井戸の無秩序化:カリフォルニア大学で分子線エピタキシ-により成長された標記歪み量子井戸上に,プラズマCVDによってSiO2膜およびSiN膜を堆積し,パタ-ニングを行った後,急速ランプ加熱(RTA)を種々の条件下で行った.次に試料からのフォトルミネッセンス(PL)を測定し,波長シフト量から無秩序化の度合いを評価した.その結果,SiO2膜は無秩序化促進剤として,またSiN膜は無秩序化を抑制する保護剤として各々作用することが確認された.また,歪み量子井戸に内在する応力は,RTA高温熱処理下で,膜の有無にかかわらず無秩序化を誘引することもわかった.さらに,選択無秩序化の面内方向分解能を顕微PLで評価し,2μm程度の微細加工が可能であることを明らかにした. 3.分布並逆進結合波長可変レーザの解析と試作:光通信に波長多重を用いる場合,半導体レーザには広帯域波長可変性が要求される.しかるに,利得結合DFBレーザにおいてはこれまで可変発振波長を得ることができなかった.ここでは,利得結合DFBレーザに広帯域波長可変性を生む新たなDistributed Forward-and Backward Coupling(DFBC)構造を,ゲント大学と共同して提案・研究した.本構造では,レーザ活性層の上部にサンプルド・グレーティング,活性層の下部に屈折率変化用の並行受動導波路をそれぞれ配置する.サンプルド・グレーティングがレーザー発振に必要な分布反射を生じ,並行導波路と活性層の間の方向性結合が波長フィルタ機能を生じる.並行導波路の屈折率をわずかに変化させるだけでフィルタによる選択波長が大きく変わるため,広帯域波長可変性が得られる.Fマトリックス解析によって波長1.55μm帯の純粋利得結合DFBCレーザの波長可変特性を計算したところ,並行導波路の屈折率が0.03変化するだけで,発振波長は約100nmも変化するということがわかった.次に,波長0.8μm帯のDFBCレーザの設計を行い,素子試作予備実験を行った.第一段階の有機金属エピタキシャル成長(MOCVD)を行った後,フォトレジスト二重塗布法を利用して,サンプルド・グレーティングを形成した.続いて第二段階MOCVD成長を行い,多数回のフォトリソグラフィーステップを経て設計通りにDFBCレーザ構造を完成した.同構造において,ダイオード特性,自然放出光特性を評価・確認している.これにより将来,波長可変動作可能なDFBCレーザを試作して行く上での基礎が固められた. 4.利得結合DFBレーザと電界吸収型外部光変調器のモノリシック集積化:清華大学と共同して標記モノリシック集積デバイスの試作を行った.DFB波長を利得プロファイルピーク波長より長波長側にデチューニングすることにより,レーザ部と変調器部に全く同一の量子井戸層を用いることができ,わずか2段階のMOCVDで作製が可能となった.また利得結合DFBの端面反射無依存性を反映してレーザは単一モード発振し,変調器部も十分な消光比を有することが実証された. 5.利得結合DFBレーザのアナログ変調歪み解析:レーザのアナログ応用で重要な2次,3次高調波歪みを,ゲント大学と共同で解析した.その結果,利得結合DFBレーザでは軸方向空間ホールバーニングが小さいことに主に起因して,2次,3次高調波歪みともに従来のDFBレーザより若干小さいか,場合によっては10dB程度の改善につながることがわかった.
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