研究課題
1)Cytopaga psychrophilaの増殖至適温度とプロテアーゼの産生至適温度の関係を調べたところ、供試6菌株の発育至適温度は19.6【・+-。】0.5℃であったのに対し、プロテアーゼ産生至適温度は13.6【・+-。】1.9℃であった。各菌株の発育のピークとプロテアーゼのピークの温度差は4℃から7℃であり、C.psychrophilaのプロテアーゼ産生の至適温度は増殖の至適温度よりも平均で6.0℃低いことが明らかとなった。また、至適温度における各菌株のプロテアーゼ量を比較したところ、菌株によりかなりの差のあることが分かった。2)Edwardsiella tardaの非病原性株は鉄キレート剤EDDHA(10μg/ml)含むHI培地では増殖できなかったが、病原性株の同培地培養上清(cross-feeding test)には増殖したことから、病原性株が鉄制限下で非病原性株にはないシデロフォアを産生している可能性が示唆された。トランスポゾンを利用し、病原性株より鉄獲得能の低下した変異株を作出したところ、この変異株のウナギに対する病原性は明らかに低下しており、E.tardaにとって鉄獲得能が重要な病原因子の一つであることが直接的に証明された。3)E.tardaからクローン化した溶血素遺伝子は溶血素と溶血素の分泌・活性化に関与するタンパク質との2つの遺伝子(ETH1AとETHB)から構成されていた。これらの遺伝子の転写制御についてmRNAレベルで解析したところ、ETHBは細菌が利用できる鉄が存在する場合は殆ど発現せず、鉄が欠乏状態になると転写が活性化されることが明らかとなった。FTHAは常に発現しており、その溶血活性を調べたところ、溶血活性は見られなかったが溶血素凝集活性が見られた。これらのことから、E.tardaの溶血素は常に発現しているが、鉄欠乏状態になりETHBが発現してこないと活性化されないと考えられた。このことは、E.tardaの溶血素が鉄欠乏状態になると溶血活性が強くなり、さらに溶血素が菌体外へ分泌されることと一致した。
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