研究分担者 |
MORAN Nancy アリゾナ大学, 準教授
BAUMANN Paul カリフォルニア大学, 教授
深津 武馬 東京大学, 大学院・理学系研究科・日本学術振興会, 特別
佐々木 哲彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60235257)
青木 重行 立正大学, 教養部, 教授 (30159280)
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研究概要 |
1.アブラムシ科の各種の昆虫は単一起源の,プロテオバクテリア・ガンマ亜族のバクテリアを細胞内共生微生物(菌細胞共生体)として保有しているが,本研究に先立って,当研究グループはこれまで知られているなかでは唯一ツノアブラ族のアブラムシのみは菌細胞共生体を欠き,これに替わって酵母様細胞外共生体をもつことを明らかにした.本研究においては,この酵母様共生体の起源と進化を明らかにすることをおもな目的として研究を行なった.すなわち,ツノアブラ族各属の代表種について,酵母様共生体の18SrDNAおよび宿主のチクトロム・オキシターゼ遺伝子の構造をPCR直接塩基配列決定法によって解析した.次いで,得られた結果を近隣結合法,最節約法,および最尤法によって検討し,共生体ならびに宿主の系統樹の作製を行なった.この結果,酵母様共生体は単一起源であり,核菌類に近縁な真菌であることが明らかになった.この結果は,これら細胞外共生体の起源が,冬虫夏草の原因である昆虫病原性菌であることを強く示唆するものである. 2.台湾ではジャムリッツエゴアブラムシを60年振りに再発見し,その採取に成功した.これによって,兵隊階級をもつ真社会性アブラムシの起源と進化についても,次年度以降大きく研究を発展できる道が拓かれた. 3.エンドウヒゲナガアブラムシの腸内細胞および菌細胞共生体の16SrDNAおよびシャペロニン遺伝子の構造解析を行ない,これらが近縁であることから,これまで推測されていたとおり,菌細胞共生体の起源が腸内細菌に求められることを初めて分子レベルで示唆した.
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