研究概要 |
αβγの3種類のサブユニットより成るヘテロ3量体GTP結合タンパク質(Gタンパク質)は,膜7回貫通型受容体から細胞内へシグナルを伝達するトランスデューサーとして機能している。中枢神経細胞の活動は,種々のイオンチャンネルの活性制御による細胞の興奮とその抑制によって主に調節されている。本研究において,神経細胞のイオンチャンネルが,Gタンパク質を介して神経伝達物質によりどのように活性調節をうけているかを,分子生物学と電気生理学の手法を組み合わせて明らかにすることを目的としている。昨年度,Gタンパク質により活性調節をうける内向きKチャンネル(GIRK)のひとつGIRK1のcDNAをラット脳より単離したが,今年度さらに異なる2種類のGIRK(GIRK2,GIRK4)のcDNAをPCR法を用いて単離した。GIRK1のN末端またはC末端にエプトープタグを遺伝子工学的に付加したcDNAを構築した後,それらをヒト胎児腎由来HEK293細胞に導入し,発現をエプトープに対する抗体を用いて確認した。また,293細胞に導入する際に,同時にβγサブユニットのcDNAを加えることにより,βγおよびGIRK1の共発現させることに成功した。γサブユニットに対する抗体を用いて,免疫沈降を行うとγサブユニットと複合体を形成するβサブユニットのみならずGIRK1の同時に沈降することが観察された。GIRK4に関しても同様な結果が得られ、GIRKとGタンパク質βγサブユニットとの直接的な相互作用を解析することが可能となった。現在、βサブユニットおよびGIRKの変異体を作成し,さらに詳細なイオンチャンネル活性化のメカニズムを検討中である。また,脂質修飾をうけずに細胞質に蓄積するβγサブユニットの変異体は,GIRKの活性化をひきおこさないことが明らかとなった。
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